精密加工品
切削加工と研削加工の違いを徹底解説!
金属加工の世界では、「削る」という共通の行為でも、切削加工と研削加工はまったく性質の異なる技術です。
どちらも素材を削って形を整える工程ですが、求める精度やコスト、用途によって選ぶべき加工法は変わります。
本記事では、その違いと適材適所の選定ポイントをわかりやすく解説します。
切削加工とは ― 高速・高効率な形づくりの技術
切削加工は、バイトやドリルなど明確な刃を持つ工具で材料を削り取る加工方法です。
旋盤やマシニングセンタ、フライス盤といった工作機械を使い、金属や樹脂などの素材を効率的に加工します。
特徴は加工スピードの速さと柔軟性。荒加工から中仕上げまで一連の工程を短時間でこなせるため、量産品や試作品の製作に向いています。
精度はおおむね±0.01~0.05mm程度で、日常的な機械部品の製作なら十分。コスト面でも優れ、大量生産や価格重視の案件では第一選択となります。
研削加工とは ― 高精度・高品質な仕上げの技術
研削加工は、砥石(といし)と呼ばれる微細な砥粒を使った工具で、ワーク表面を少しずつ削り取る方法です。
平面研削盤や円筒研削盤など専用の機械を使用し、非常に滑らかな表面と高い寸法精度を実現します。
研削の最大の特長はその精度と表面品質。±0.001mm単位の制御が可能で、仕上がりは鏡面のように美しく、摩擦や振動を抑えることができます。
そのため、シャフトやベアリング部品、金型などの機能部品の最終仕上げに欠かせません。
ただし、加工時間が長く、砥石交換や冷却など手間がかかるため、コストは高めです。
量産向きというより、精密部品や重要機構部に適しています。
切削加工と研削加工の主な違い
| 項目 | 切削加工 | 研削加工 |
|---|---|---|
| 工具 | 刃物(バイト・エンドミルなど) | 砥石(微細な砥粒) |
| 精度 | ±0.01〜0.05mm | ±0.001mmレベル |
| 加工速度 | 速い | 遅い |
| コスト | 低い | 高い |
| 主な用途 | 形状出し・量産加工 | 仕上げ・高精度部品 |
| 対応材料 | 鉄・アルミ・真鍮など一般金属 | 焼入鋼・セラミックなど硬質材 |
適材適所の選び方
切削加工が向くケース
大量生産でコストを重視したいとき。精度要求が一般的な範囲(±0.05mm程度)で、アルミや真鍮など比較的柔らかい素材を扱う場合。試作や多品種少量の短納期案件にも適しています。
研削加工が向くケース
高精度・高品位な表面仕上げが必要な部品や、焼入れ鋼など切削では削りにくい硬質材料の加工に最適です。
寸法精度や滑り性能が製品の性能に直結する場合には研削を選びましょう。
多くの製造現場では「切削で形を出し、研削で仕上げる」という組み合わせが一般的です。工程を分けることでコストと精度を両立できます。
コストと品質を両立するための選定ポイント
- 要求精度を明確にする
図面に公差・面粗さを具体的に記載し、必要以上の精度を求めないことがコストダウンの第一歩です。 - 材料の硬さを考慮する
硬質材や焼入れ材は研削向き、軟質材は切削向きです。 - 発注先の設備を確認する
切削専業か、研削も対応できるかで価格と納期が大きく変わります。 - 工程分担を最適化する
荒加工を切削で行い、寸法や表面を研削で仕上げる流れが効率的です。
まとめ
切削加工は「速く安く形をつくる」ための工程、研削加工は「精密に仕上げる」ための工程です。
製品の目的や精度要求を正しく見極め、適切な加工法を選ぶことが品質・コスト・納期の最適化につながります。
特に量産部品や海外発注の際は、「どこまで研削が必要か」を初期段階で判断することが重要です。適材適所の加工選定が、モノづくりの競争力を左右します。
- 製品紹介
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加工方法
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