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精密加工品

A5052とは?特徴・用途・加工性やA5056/A6063との違いを解説

A5052

A5052とは、アルミニウム合金の一種で、その優れた特性から幅広い分野で利用されている材質です。
この記事では、A5052が持つ基本的な特徴や具体的な用途、加工性について詳しく解説します。

また、材料選定の際にしばしば比較対象となる他のアルミ合金、A5056やA6063などとの違いも明確にし、それぞれのメリット・デメリットを明らかにします。
設計者や技術者がA5052を適切に活用するための実践的な情報を提供します。

A5052とは中程度の強度を持つ代表的なアルミ合金


A5052とは、アルミニウムにマグネシウムを主成分として添加した5000系のアルミニウム合金です。
この金属素材は、熱処理をせずとも中程度の強度を持つ非熱処理型合金の代表格として知られています。
その最大の特徴は優れた耐食性であり、特に海水に対して強い耐性を示します。
また、溶接性や成形性も良好で、汎用性が非常に高い性質を持ちます。

市場での流通量が極めて多く、様々な板厚や形状の材料を容易に入手できるため、コストパフォーマンスに優れた材料として多くの製品に採用されています。

A5052が持つ4つの主な特徴


A5052はその優れた特性のバランスから数あるアルミニウム合金の中でも特に広く利用されています。
主な特徴として第一に海水にも耐えうるほどの優れた耐食性が挙げられます。
第二に高強度ではありませんが実用上十分な中程度の強度と優れた疲労強さを持ち合わせています。

第三に溶接性が良好であるため複雑な構造物の製作にも適しています。
そして第四に曲げや切削といった多様な加工に対応できる汎用性の高さも魅力です。
これらの特徴がA5052を多岐にわたる用途で活躍させる要因となっています。

1. 海水にも強い優れた耐食性

A5052の最も優れた特徴は、極めて高い耐食性にあります。
アルミニウムは酸素と結合しやすく、表面に緻密で安定した酸化皮膜を自然に形成するため、この皮膜が内部の腐食進行を防ぎます。
特にA5052は、マグネシウムの添加によりこの性質が強化されており、淡水や海水といった水に対する耐性が非常に高いです。

そのため、錆の発生が懸念される船舶部品や沿岸地域で使用される建築資材などに多用されます。
さらに、アルマイト(陽極酸化処理)や塗装、めっきといった表面処理との相性も良く、これらの処理を施すことで耐食性や耐摩耗性、装飾性を一層向上させることが可能です。

2. 実用上十分な中程度の強度と疲労強さ

A5052は、熱処理型の高強度合金と比較すると引張強さや耐力は劣りますが、構造用材料として実用上は十分な中程度の強度を有しています。
質別H34の場合、引張強さは260N/mm²程度であり、一般的な板金加工や部品材料として幅広い用途に対応可能です。
硬度は比較的柔らかい部類に入り、高い延性、つまり伸びを持つため、塑性加工に適しています。

また、A5052のもう一つの重要な特性として、疲労強さの高さが挙げられます。
繰り返し応力がかかるような環境でも破壊されにくいため、振動が加わる車両や船舶の部品にも安心して使用できます。

3. 溶接性が良好で接合しやすい

A5052は、アルミニウム合金の中でも溶接性が良好な材料として知られています。
TIG溶接やMIG溶接をはじめとする様々なアーク溶接方法に適用でき、信頼性の高い接合が可能です。
アルミニウム合金の溶接では、溶接時に発生する熱で強度が低下する「焼きなまし効果」が問題となることがありますが、A5052はこの強度低下率が比較的小さいという利点があります。

また、溶接割れの感受性も低く、溶接部の品質を安定させやすいです。
これらの特性から、タンクや筐体、フレーム構造物など、溶接による組み立てが必要な製品の材料として広く採用されています。

4. 曲げや切削など幅広い加工に対応できる

A5052は、その優れた成形性により、多様な加工方法に対応できる汎用性の高い材料です。
特に延性が高いため、曲げ加工や深絞り加工といった塑性加工に適しており、複雑な形状の板金部品を容易に製作できます。

一方で、切削加工においては、純アルミニウムに近い性質を持つため、工具への溶着が起こりやすく、切削性は特別優れているわけではありません。
そのため、フライス加工などを行う際は、切削油を適切に使用し、すくい角の大きい工具を選ぶといった工夫が求められます。
工具摩耗が進みやすい傾向があるものの、適切な切削条件を設定すれば、研削を含め安定した加工が可能です。
押出成形にも対応できます。

よく比較されるアルミ合金との違いを解説


A5052は非常にバランスの取れた優れた材料ですが、最適な材料を選定するためには、他のアルミニウム合金との違いを理解することが重要です。
特に、同じ5000系のA5056、押出形材で多用されるA6063、そして高強度で知られるA7075(超々ジュラルミン)は、頻繁に比較検討される材料です。

ここでは、これらの代表的な合金とA5052を比較し、それぞれの特性、長所、短所を明確にすることで、用途に応じた的確な材料選びを支援します。

A5056との違い:マグネシウムの含有量と強度の差

A5056は、A5052と同じ5000系のマグネシウム系合金ですが、両者の主な違いはマグネシウムの含有量にあります。
A5056はA5052よりもマグネシウムの含有率が高く(A5052が約2.5%に対し、A5056は約5%)、その結果として引張強さや耐力がA5052よりも優れています。
この特性から、A5056はより高い強度が求められる部品に使用されます。
また、A5056は切削性にも優れており、被削性が良いため、ボルト、ナット、リベットといった切削加工品や、カメラの鏡筒部品などにも利用されます。

一方で、耐食性はA5052の方が若干優れており、特に応力腐食割れに対する耐性はA5052に軍配が上がります。

A6063との違い:熱処理の可否と押出加工性

A6063は、アルミニウムにマグネシウムとケイ素を添加した6000系の合金です。
A5052との最も大きな違いは、A6063が焼入れ・焼戻しといった熱処理によって強度を向上させることができる熱処理型合金であるのに対し、A5052は加工硬化によって強度を調整する非熱処理型合金である点です。

また、A6063は押出加工性に極めて優れており、複雑な断面形状を持つ形材の製造に適しています。
このため、建築用のサッシやドア、カーテンウォール、あるいは機械の構造フレームなどに多用されます。
耐食性は両者とも良好ですが、強度は熱処理を施したA6063の方が一般的に高くなります。

A7075(超々ジュラルミン)との違い:強度と耐食性のバランス

A7075は、アルミニウムに亜鉛(Zn)とマグネシウム(Mg)を主成分として添加した7000系の合金で、「超々ジュラルミン」の名称で知られています。
A5052との決定的な違いは強度であり、A7075は熱処理(T6処理)を施すことで、アルミニウム合金の中で最高クラスの引張強さを発揮します。

このため、航空機の主翼や胴体といった構造部材や、高い強度が要求されるスポーツ用品などに使用されます。
しかし、その反面、A7075はA5052に比べて耐食性が劣るという弱点があり、特に応力腐食割れを起こしやすい傾向があります。
そのため、使用環境に応じて防食処理が必須となり、強度と耐食性のバランスを考慮した使い分けが必要です。

A5052の代表的な用途例


A5052は、耐食性、中程度の強度、加工性、溶接性のバランスに優れることから、非常に幅広い分野で活用されています。
鉄鋼材と比較して軽量である利点を活かしつつ、他のアルミ合金、例えば強度に優れるA2017や汎用性の高いA6061などとの使い分けが行われています。

ここでは、A5052の特性が具体的にどのような製品に活かされているのか、代表的な用途例を3つのカテゴリーに分けて紹介します。
船舶・輸送機器から化学プラント、建築内外装まで、その応用範囲の広さがわかります。

船舶・車両・航空機関連の部品

A5052の優れた耐海水性は、船舶関連の分野でその真価を発揮します。
船体や甲板、マスト、手すりなどの構造部材や艤装品に広く用いられています。
また、軽量性を活かして、自動車のボディパネルやドア、トラックの荷台、鉄道車両の構体などにも採用され、燃費向上に貢献しています。

航空機分野では、高い強度は不要だが耐食性が求められる燃料タンクや油圧配管などに使用されます。
これらの用途では、1mm、3mm、5mmといった様々な板厚の板材が用いられ、薄板から中厚の平板まで、部品の要求仕様に応じて使い分けられています。

化学プラント・液体貯蔵タンク

A5052が持つ高い耐食性は、薬品や液体を扱う過酷な環境でも信頼性を発揮します。
そのため、化学プラントの配管や熱交換器、反応槽といった各種装置の材料として採用されています。
また、ガソリンや軽油、その他の化学薬品を貯蔵する大型の液体貯蔵タンクの材料としても一般的です。

A5052は、極低温環境下でも材料が脆くなる「低温脆性」を示さないという優れた特性も持ち合わせているため、液化天然ガス(LNG)関連の設備にも使用可能です。
これらの設備では、板材だけでなく、配管や構造部材として丸棒などの形状も利用され、幅広い温度域で安定した性能が求められます。

建築内外装や一般板金製品

建築分野では、A5052の耐食性と加工性の良さが活かされ、建物の屋根材、壁パネル、スパンドレル、ルーバーといった内外装材に利用されています。
アルマイト処理を施すことで、美しく耐候性の高い外観が得られるため、意匠性が求められる場所にも適しています。

さらに、その加工性の高さから、身近な一般板金製品にも広く使われています。
例えば、通信機器や計測機器の筐体(ケース)、装置のカバー、制御盤、道路標識の看板などが挙げられます。
これらの製品では、平板だけでなく、補強材やフレームとしてフラットバー(平角棒、平鋼)や角棒といった様々な形状の材料が活用されています。

A5052を加工する際に知っておきたい注意点


A5052は汎用性が高く加工しやすい材料ですが、その特性を理解せずに扱うと思わぬ不具合につながることがあります。
特に、他の金属材料と比較して柔らかく、熱の影響を受けやすいというアルミニウム合金特有の性質は、加工時に注意が必要です。

ここでは、A5052を加工する上で特に知っておきたい注意点を2つ挙げ、高品質な部品を製作するためのポイントを解説します。
表面の傷つきやすさと、切削時の歪みについて理解を深めることが重要です。

表面に傷がつきやすいため丁寧な取り扱いが必要

A5052は、鉄鋼材料などに比べて硬度が低いため、表面に傷がつきやすいという性質があります。
材料の保管時や工程間の搬送、加工機へのセッティング時に、他の部材や治具と接触することで簡単に打痕や擦り傷が発生します。

特にアルマイト処理などの表面処理を施す前の製品では、わずかな傷でも最終的な外観品質を大きく損なう原因となります。
高精度な仕上がりを求める場合、材料の取り扱いには細心の注意が必要です。
保護フィルムが貼られた材料を使用したり、加工の各段階で製品同士が接触しないよう管理を徹底したりするなどの対策が品質維持に不可欠です。

切削時に歪みや変形が生じることがある

A5052は比較的柔らかく、熱伝導率が高いため、切削加工時に発生する熱によって歪みや変形が生じやすい傾向があります。
特に、薄い板材の広範囲な切削や、大きな切り込み量での加工を行うと、加工熱による熱変形や、材料の内部応力が解放されることによる「反り」が発生しやすくなります。
この変形を最小限に抑えるためには、適切な切削条件の選定が不可欠です。

切削速度や送り速度を調整し、一度に削る量を減らす、切れ味の良い工具を使用する、潤滑性の高い切削油を十分に供給するなどの対策が有効です。
高精度が求められる加工では、荒加工と仕上げ加工を分けるといった工程の工夫も必要になります。

A5052の規格と種類【A5052Sや質別記号も解説】

A5052を材料として正しく選定使用するためには、JIS日本産業規格で定められた規格を理解することが不可欠です。
JISH4000には、A5052の化学成分や機械的性質強度伸びなどが規定されています。
また、同じA5052という材質でも、加工硬化や熱処理の状態を示す質別記号によって特性が大きく異なります。

ここでは、A5052の基本情報である成分、比重、熱伝導率などに触れつつ、市場で時折見かけるA5052Sという表記の意味や、用途に応じた質別の選び方を解説します。

A5052とA5052Sに性能の違いはある?

市場で材料を探していると、「A5052S」という表記を目にすることがあります。
しかし、この「S」はJIS規格で定められた記号ではなく、材料を供給するメーカーや販売店が独自に付与している識別記号の一種です。
一般的には、JIS規格のA5052に準拠した材料であることを示したり、特定のメーカーの製品であることを示したりする目的で使われることが多いようです。
したがって、化学成分や機械的性質といった性能面において、A5052とA5052Sに本質的な違いはありません。

ミスミなどの部品サプライヤーで材料を選定する際も、これらは同一の材料として扱われます。
材料選定では「S」の有無を気にする必要はなく、後述する質別記号を確認することが重要です。

代表的な質別記号(調質)の意味と選び方

A5052の性能を左右するのが質別記号(調質)です。
これは材料がどのような処理を施されたかを示す記号で、用途に応じて適切に選ぶ必要があります。
代表的なものに「O材」と「H材」があります。
「O材」は、焼きなまし処理を施したもので、最も柔らかく延性が高い状態です。
そのため、曲げ加工や絞り加工といった複雑な成形を伴う用途に適しています。

一方、「H材」は加工硬化によって強度を高めた材料で、数字がその程度を示します。
中でも「H34」は、加工硬化後に安定化処理を行ったもので、強度と成形性のバランスが良く、最も一般的に流通している質別です。
強度を重視する場合はH34、成形性を最優先するならO材を選ぶのが基本となります。

まとめ

A5052は、マグネシウムを添加した5000系のアルミニウム合金で、中程度の強度、優れた耐食性、良好な加工性と溶接性という特性をバランス良く備えています。
特に海水に対する耐性が高く、船舶や沿岸部の設備に多用されるほか、その汎用性から自動車、建築、タンク類、一般板金製品まで幅広い用途で採用されています。

市場での流通量が非常に多く、板材や棒材など様々な形状・サイズでの入手性が高い点も大きな利点です。
価格も他の特殊なアルミ合金に比べて比較的安価で、コストパフォーマンスに優れるため、設計や製造の現場で広く選ばれている代表的な材質です。


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