シンブルとは?ワイヤロープの摩耗を防ぐ保護金具
シンブルはワイヤロープの先端に輪(アイ)を作る際に摩耗や型崩れを防ぐために使用されるU字型の保護金具です。
フックなどを直接ワイヤロープにかけると一点に力が集中してしまいワイヤが損傷する原因となります。
シンブルを内側に入れることで接触面が広がりロープにかかる負担を軽減します。
これによりワイヤロープの形状を安定させ大切なロープを保護補強し安全性を高めることができます。
目次
ワイヤロープの寿命を延ばす!シンブルが果たす重要な役割
シンブルが果たす最も重要な役割は、ワイヤロープの寿命を延ばすことです。
ワイヤロープの先端に作る輪の部分を「アイ」と呼びますが、このアイに直接フックやシャックルを掛けて荷物を吊り上げると、接触部分に大きな摩擦と圧力がかかり続けます。
その結果、ワイヤの素線が切れたり、アイが潰れて変形したりして、ロープ全体の強度が著しく低下します。
シンブルをアイに装着することで、これらの損傷を防ぎ、ワイヤロープを長持ちさせることが可能になります。
シンブルの主な種類とそれぞれの特徴

シンブルには、使用される環境や目的に応じて様々な種類が存在します。
主に材質の違いによって分類され、耐食性に優れたステンレス製や、コストパフォーマンスが高いメッキ製が一般的です。
また、形状にも種類があり、断面が丸い「丸シンブル」や、開いた形状の「割シンブル」などがあります。
それぞれの特徴を理解し、用途に合わせて最適なシンブルを選ぶことが、安全性と作業効率を高める上で重要です。
耐食性に優れた「ステンレス製(Sシンブル)」
ステンレス製のシンブルは、錆びにくく耐食性に優れている点が最大の特徴です。
一般的にSUS304などの材質が使用され、屋外や沿岸部、湿気の多い工場内といった錆が発生しやすい環境での使用に最適です。
雨風にさらされる場所や水に触れる可能性がある場所でも、長期間にわたって強度を維持します。
価格はメッキ製に比べて高価になる傾向がありますが、耐久性が高く、メンテナンスの手間が少ないため、過酷な環境下での長期的な使用を考慮すると経済的と言えます。
コストパフォーマンスが高い「メッキ製」
メッキ製のシンブルは、鉄製の本体にユニクロメッキやドブメッキなどの表面処理を施したものです。
ステンレス製と比較して価格が安く、ホームセンターなどでも容易に入手できるため、コストを抑えたい場合に適しています。
主に屋内での使用や、頻繁に交換する消耗品としての利用に向いています。
ただし、表面のメッキが傷ついたり剥がれたりすると、そこから錆が発生して強度が低下する可能性があります。
そのため、屋外での恒久的な設置など、高い耐久性が求められる場面での使用には注意が必要です。
用途で使い分ける「標準型」と「軽量型」
シンブルは、ワイヤロープのアイ(輪)部分を保護する金具であり、ワイヤロープの摩耗や変形を防ぎ、寿命を延ばすために用いられます。シンブルには主にA形、B形、C形があり、用途に応じて選ぶことが重要です。
A形シンブルは、被覆されていない通常のワイヤロープに使用される最も一般的なタイプです。 ワイヤロープ径に合わせてサイズを選びます。
B形シンブルは、被覆されたワイヤロープに使用されます。 被覆の厚みに合わせてシンブルの溝幅がA形よりも広くなっているのが特徴です。
C形シンブルは、麻ロープや合成繊維ロープの保護に用いられます。 アスレチックのネットや船舶用の縄梯子などで使用されることがあります。
失敗しないシンブルの選び方!3つの重要ポイント
シンブルを効果的かつ安全に使用するためには、適切な製品の選定が欠かせません。
数ある製品の中から最適なものを選ぶには、いくつかの重要なポイントがあります。
特に「ワイヤロープのサイズに合っているか」「使用環境に適した材質か」「用途に応じた強度があるか」という3つの点をしっかり確認することが大切です。
これらのポイントを押さえることで、ワイヤロープの性能を最大限に引き出し、安全な作業を実現します。
ポイント1:使用するワイヤロープの直径に合ったサイズを選ぶ
シンブルを選ぶ上で最も基本的なポイントは、使用するワイヤロープの直径に適したサイズを選ぶことです。
シンブルのサイズは「呼び」で示され、適合するワイヤロープの直径と一致させる必要があります。
例えば、直径8mmのワイヤロープには「呼び8」や「A-8」といった規格のシンブルを使用します。
サイズが合わないと、ワイヤが溝にしっかり収まらず、シンブルが外れたり、ワイヤに余計な負荷がかかったりする原因となります。
製品パッケージや規格表で適合サイズを必ず確認してください。
「呼び22」や「呼び38」といった大きなサイズもあります。
ポイント2:屋外や水回りでの使用にはステンレス製がおすすめ
シンブルを選ぶ際は、使用する環境を考慮して材質を決めることが重要です。
雨風にさらされる屋外や、ボート・船舶といった水回り、湿気の多い場所で使用する場合は、耐食性に優れたステンレス製を選びましょう。
メッキ製のシンブルをこのような環境で使用すると、メッキが剥がれた部分から錆が発生し、強度が低下してしまう恐れがあります。
一方で、屋内などの乾燥した環境で、コストを重視する場合にはメッキ製でも問題ありません。
長期的な耐久性と安全性を考慮し、使用環境に最適な材質を選択してください。
ポイント3:吊り荷の重量や用途に応じた強度を確認する
シンブルを選ぶ際には、その用途、特に吊り上げる荷物の重量に見合った強度を持つ製品かを確認することが不可欠です。
荷物の固定や引っ張る程度の用途であれば軽量型でも対応できますが、クレーン作業などで重量物を吊る場合には、必ず肉厚で頑丈な標準型シンブルを選んでください。
製品によっては使用荷重や破断荷重が明記されている場合があるため、安全に作業できる範囲の強度を持つかを確認する必要があります。
強度が不足しているシンブルを使用すると、変形や破損を招き、重大な事故につながる危険性があります。
【初心者でも簡単】シンブルの正しい使い方と取り付け手順

シンブルの取り付けは、正しい手順に沿って行えば初心者でも簡単に行うことができます。
しかし、手順を誤るとワイヤロープの性能を損なったり、使用中にシンブルが外れたりする危険が伴います。
安全性を確保するためには、ワイヤの先端にシンブルをはめ込み、溝に沿ってきれいに曲げ、最終的にクリップやスリーブで確実に固定するという一連の工程を丁寧に行うことが重要です。
ステップ1:ワイヤの先端にシンブルをはめ込む
まず、ワイヤロープの先端を折り返して輪を作る位置を決め、その部分にシンブルをあてがいます。
シンブルの外周にはワイヤロープが収まるための溝があるので、その溝にワイヤロープがぴったりとはまるようにセットしてください。
このとき、ワイヤロープがねじれていたり、溝から浮き上がっていたりしないように注意深く位置を調整します。
この最初の位置決めが、後の工程の仕上がりと強度に大きく影響するため、慎重に行うことがきれいで安全なアイ加工の第一歩となります。
ステップ2:シンブルの溝に沿ってワイヤをU字に曲げる
シンブルを正しい位置にセットしたら、次にシンブルを芯にしてワイヤロープを溝に沿わせながらゆっくりとU字型に曲げていきます。
この作業中は、ワイヤロープがシンブルの溝から外れないように、手でしっかりと押さえながら力を加えるのがコツです。
特に直径が太いワイヤロープは硬くて曲げにくいため、万力などで固定すると作業が安定し、安全に進められます。
無理に急いで曲げようとするとワイヤを傷つける原因になるので、慎重に作業を進め、ワイヤの先端が本線に沿う形になるまで曲げてください。
ステップ3:ワイヤークリップやスリーブでしっかりと固定する
ワイヤロープをU字に曲げた後、その形状を維持するために固定作業が行われます。
一般的な固定方法としては、「ワイヤークリップ」で締め付ける方法と、「アルミスリーブ」を専用工具で圧着する方法などが挙げられます。
ワイヤークリップを使用する際は、ワイヤ径に応じた規定の個数を正しい向きで取り付け、適切な強さでナットを締め付ける必要があります。
アルミスリーブを使用する場合は、ワイヤ径に合ったスリーブを選び、専用の圧着ペンチでしっかりと圧着(かしめ)ます。
いずれの方法においても、固定が不完全だと使用中にワイヤが抜ける危険があるため、確実な作業が求められます。
シンブルを使用する際の安全に関する注意点
シンブルを安全に使用するためには、いくつかの注意点を守る必要があります。
まず、作業を始める前には必ずシンブル本体に亀裂や大きな傷、著しい変形、過度な摩耗がないかを目視で点検してください。
異常が見つかった場合は、絶対に使用してはいけません。
また、使用するワイヤロープの直径とシンブルのサイズが適合していることを必ず確認し、サイズの合わない組み合わせでの使用は避けるべきです。
ワイヤークリップなどで固定した後は、定期的に緩みがないかを点検することも重要です。
特に重量物を吊り上げる際は、シンブルを含めた吊り具全体の使用荷重を超えないよう、厳重に管理することが求められます。
まとめ
シンブルは、ワイヤロープの先端に作るアイ(輪)部分を保護し、摩耗や型崩れを防ぐことでロープの寿命を延ばすための重要な金具です。
製品にはステンレス製やメッキ製といった材質の違いや、標準型、軽量型といった形状・強度の違いがあり、使用する環境や目的に応じて適切なものを選ぶ必要があります。
選定の際は、ワイヤロープの直径に合ったサイズであること、使用環境に適した材質であること、そして用途に見合った強度があることの3点を確認することが重要です。
正しい手順で取り付け、定期的な安全点検を行うことで、ワイヤロープを安全に長く使用できます。