精密加工品
「鉄」と「鋼」は何が違う?
加工現場から見る金属素材の基本
金属加工の世界では、「鉄」と「鋼(はがね)」という言葉がよく登場します。
どちらも身近な金属素材ですが、実は成分や性質に明確な違いがあります。
この記事では、切削加工や試作を行ううえで知っておきたい「鉄と鋼の違い」について解説します。
鉄と鋼は「炭素の量」で区別される
鉄と鋼の違いは、主に炭素(カーボン)の含有量によって決まります。
| 種類 | 炭素含有量 | 特徴 |
|---|---|---|
| 鉄(純鉄) | 約0.02%以下 | やわらかく、延性が高いが強度が低い |
| 鋼(はがね) | 約0.02〜2.1% | 強度・硬度が高く、熱処理により性質を調整可能 |
| 鋳鉄(ちゅうてつ) | 約2.1%以上 | 硬くて脆い。鋳造品に多い |
つまり、鉄に少量の炭素を加えて強度を高めたものが「鋼」です。
炭素の量を調整することで、硬さ・強度・加工性などを自在にコントロールできます。
鉄(Fe)の特徴
純粋な鉄は非常に柔らかく、磁性があり、加工はしやすいです。
その反面、強度や耐摩耗性が不足するため、構造材や機械部品にはそのまま使われることは少ないです。
ただし電磁性に優れるため、電磁鋼板や軟鉄コアなど、磁気特性を活かした分野では多く利用されています。
鋼(はがね)の特徴
鉄に炭素や合金元素(クロム、モリブデン、ニッケルなど)を加えたものが「鋼」です。
炭素量を調整したり、熱処理を施すことで、強度・硬度・靱性・耐摩耗性などを自在に変化させることができます。
| 鋼の種類 | 主な特徴 | 代表材質例 |
|---|---|---|
| 炭素鋼(SC材) | 一般的な構造用鋼。強度と加工性のバランスが良い | S50C、S45C |
| 合金鋼(SCM材) | クロム・モリブデン添加で強度・耐疲労性UP | SCM435、SCM440 |
| ステンレス鋼(SUS材) | クロム・ニッケルで高い耐食性を実現 | SUS304、SUS316 |
| 工具鋼・高速度鋼 | 高硬度で刃物・金型などに使用 | SKD11、SKH51 |
鋼は「熱処理」や「表面処理」で特性を変えやすく、切削・鍛造・溶接などあらゆる加工に対応できる万能素材です。
切削加工における違い

加工現場から見ると、鉄と鋼では削りやすさや仕上がり精度にも違いがあります。
| 項目 | 鉄(純鉄) | 鋼 |
|---|---|---|
| 硬さ | やわらかい | 炭素量・熱処理で変化 |
| 切削性 | 良好 | 材質により差が大きい(SCMはやや硬め) |
| 強度 | 低い | 高強度・高靱性 |
| 表面仕上げ | 光沢が出やすい | 材質によってバリ・摩耗に注意 |
特に鋼は、種類によって切削条件(回転数・送り速度・工具材質)を調整することが重要です。
適切な工具選定と加工条件により、高精度な仕上がりと工具寿命の両立が可能になります。
まとめ:鉄は素材の基礎、鋼は実用の主役
| 観点 | 鉄 | 鋼 |
|---|---|---|
| 含有元素 | 純鉄 | 鉄+炭素+合金元素 |
| 性質 | やわらかく加工しやすい | 強度・硬度が高く調整自在 |
| 用途 | 電磁部品など特殊分野 | 機械構造物・工具・建築・自動車など |
鉄は「ベース素材」、鋼は「実用素材」と言えるでしょう。
切削加工の現場では、鋼材(S45C、SCM435、SUS304など)が中心的に使われています。
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