精密加工品
面粗度とは?Ra・Rzの違いや使い分けも
製品の表面は、一見すると滑らかに見えても、実際には顕微鏡レベルで細かな凸凹が存在しています。
この微細な凹凸を「面粗度(めんそど)」と呼び、機械加工や研磨などの仕上げ品質を評価する上で非常に重要な指標となります。
面粗度は、製品の外観だけでなく、摩擦、摩耗、密着性、気密性などの機能にも直接影響を与えるため、設計段階から厳密に管理されます。
面粗度を測る目的
面粗度を評価する目的は、単に「表面のきれいさ」を判断するためではありません。
例えば、エンジン部品やベアリングのように滑らかな摺動が必要な部品では、粗すぎる面は摩擦や磨耗を招きます。
一方で、接着や塗装を行う場合には、ある程度の粗さがあった方が密着性が向上することもあります。 このように、用途に応じて最適な面粗度を選ぶことが、製品品質の安定につながります。
RaとRzの違い
面粗度を数値で表す代表的なパラメータが「Ra」と「Rz」です。
どちらも表面の凸凹を平均的な数値として表しますが、その意味と特徴は異なります。
● Ra(算術平均粗さ)
Raは、測定した断面の凹凸から求めた「中心線に対する高さの平均値」です。
簡単に言えば、凸凹の振れ幅を平均化した滑らかさの度合いを示します。
Raが小さいほど、表面は滑らかです。 Raは比較的安定した値を得やすいため、一般的な面粗度の管理に最もよく使われる指標です。
● Rz(十点平均粗さ)
Rzは、測定区間内で最も高い5つの山と最も深い5つの谷の差を平均した値です。
つまり、表面の凹凸の「高さの差」を強調した指標であり、 局所的な傷や突起の影響を受けやすいという特徴があります。
見た目の仕上がりや異物との当たり具合を重視する場合には、Rzの方が適しています。
RaとRzの使い分け
Raは全体の平均的な粗さを表すのに対し、Rzは部分的な最大凹凸を反映します。
そのため、Raは機能面の評価、Rzは外観や接触性の評価に用いられることが多いです。
- ベアリングの内径面など、滑らかさを重視する摺動部 → Raで管理
- 溶接面や塗装下地など、表面の凹凸が密着性に影響する箇所 → Rzで管理
同じ「滑らかな面」に見えても、RaとRzの値が異なることは珍しくありません。
両方の値を理解しておくことで、加工後の品質評価をより正確に行えます。
仕上げ品質の見方と管理のポイント
1. 設計段階での指定
図面上には「Ra=0.8」や「Rz=6.3」といった指定が記されます。
これは、機能や用途に応じた必要最低限の仕上げ品質を示しており、 過剰な研磨はコスト増加や時間の無駄になります。
2. 加工法との関係
面粗度は加工方法によって大きく変わります。
旋削ではRa3.2程度、研削ではRa0.8、鏡面研磨ではRa0.05以下も可能です。
どの工程でどの程度の粗さが実現できるかを把握しておくことが重要です。
3. 測定と管理
面粗度計(表面粗さ計)を用いて、触針で表面をなぞり測定します。
データは数値化されるため、客観的に品質を確認できます。
特に高精度部品では、工程ごとに測定を行うことが望ましいです。
まとめ
面粗度は、見た目以上に製品の性能や耐久性を左右する重要な要素です。
RaとRzという指標を正しく理解することで、表面仕上げの「良し悪し」を科学的に判断できるようになります。
設計・加工・検査のそれぞれの段階で、最適な粗さを指定し、 過不足のない品質管理を行うことが、安定した製品づくりの第一歩です。
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