精密加工品
銅加工の主な方法|難しい切削や板加工のポイントを解説
銅は優れた特性を持つ一方で、加工が難しい金属として知られています。
特に切削加工や板の加工には専門的な知識と技術が求められ、適切な方法を選択しなければなりません。
この記事では、銅加工の代表的な方法や難易度の高い切削が難しい理由、高精度な加工を実現するためのポイントについて解説します。
銅の種類と特徴、それぞれに適した加工の方法も紹介します。
銅の加工が難しいと言われる理由とは?
銅は多くの産業で利用される重要な金属ですが、その特性ゆえに加工が難しい側面を持っています。
熱伝導性や電気伝導性が非常に高いこと、そして粘り強い性質を持つことが主な要因です。
これらの特性が加工時にどのような影響を与えるのかを理解することが、適切な加工方法を選択する上で重要になります。
これから、銅の加工をする際に課題となる具体的な理由を掘り下げて説明します。
高い熱伝導性が工具の摩耗を早める
銅は金属の中でも特に熱伝導率が高く、加工時に発生する熱がワークだけでなく工具の刃先にも素早く伝わります。
この熱が刃先に蓄積すると、刃先の温度が急激に上昇してしまいます。
高温になった工具は硬度が低下し、摩耗が著しく早まる原因となります。
また、熱膨張によって加工精度が低下する恐れもあるため、加工中の温度管理が極めて重要です。
適切な切削速度や切削油の選定、工具材質の検討など、熱対策を考慮した加工条件の設定が求められます。
粘り気が強く切りくずの処理が難しい
銅は展延性に富み、粘り気が強いという性質を持っています。
このため、切削加工時に切りくずが長く伸びてしまい、工具やワークに絡みつきやすくなります。
絡みついた切りくずは、加工面の仕上げ精度を悪化させたり、工具の損傷を引き起こしたりします。
特に、ドリルによる穴あけ加工などでは、切りくずが穴の内部で詰まり、工具の破損につながるケースも少なくありません。
これを防ぐためには、切りくずを細かく分断するような工具の選定や、切りくずをスムーズに排するための工夫が不可欠です。
電気伝導性の高さが放電加工に影響する
銅は電気伝導性と熱伝導性が非常に高いため、放電加工において電極材料として広く利用されています。加工中に発生する熱を効率的に放散し、安定した放電を維持することで、効率的な加工が可能になります。実際に、銅は放電加工で最も多く使用される電極材料の一つです。
しかし、電気抵抗が低いことで、放電の安定性を保つのが難しい場合があり、加工速度が低下する可能性もあります。
また、異常放電が発生しやすく、電極の消耗が激しくなったり、加工面にクレーターのような欠陥が生じたりするリスクも高まります。これらの理由から、高硬度な材料の加工においては、銅タングステンやグラファイトなどの他の電極材料が選択されることもあります。
目的別に解説!銅の代表的な加工方法5選
銅はその特性から様々な製品に使用されており、最終的な製品形状に応じて多岐にわたる加工方法が用いられます。
代表的な方法としては、機械を用いて材料を削る切削加工や、板材を変形させる塑性加工、部品同士を接合する溶接などが挙げられます。
ここでは、目的別に分類し、銅の代表的な加工方法を5つ紹介します。
それぞれの方法には特徴があり、作りたい部品や製品の仕様に合わせて適切なものを選択する必要があります。
精密な形状を削り出す「切削加工」
銅の切削加工は、工具を用いて材料を削り取り、目的の形状を作り出す方法です。
代表的な手法には、材料を回転させて削る旋盤加工や、工具を回転させて平面や溝を加工するフライス加工があります。
近年では、これらの動きをコンピュータ制御で行うマシニングセンタが主流となり、複雑で精密な形状の加工が可能です。
さらに高い寸法精度や滑らかな表面が求められる場合は、砥石で表面をわずかに削る研削加工や、より滑らかに仕上げる研磨が行われます。
これらの技術を組み合わせることで、光を反射するほどの鏡面仕上げも実現できます。
希望の形状に切り分ける「切断加工」
銅の切断加工は、板材や棒材を希望の寸法や形状に切り分ける工程です。
一般的な金属材料で広く用いられるレーザー加工は、銅に対して適用が難しい側面を持ちます。
これは、銅が高い反射率を持つため、レーザー光が反射されてしまい、効率的に熱を吸収できないことが原因です。
特に、赤外線レーザは反射されやすいため、加工が困難でした。
しかし、近年ではファイバーレーザーや高出力レーザ技術の進歩により、銅のレーザー切断も可能になってきています。
その他、ウォータージェット加工やシャーリングなどの方法も、材料の厚みや求められる精度に応じて選択されます。
板材を任意の角度に折りたたむ「曲げ加工」
曲げ加工は、銅の板材に力を加えて任意の角度や形状に変形させる塑性加工の一種です。
プレスブレーキと呼ばれる機械を用いて、金型で板材を挟み込み、直線的に折り曲げるのが一般的です。
銅は展延性に優れているため、比較的曲げやすい金属ですが、スプリングバックを考慮した角度設定が必要になります。
また、板材を金型で押し込んで容器状にする絞り加工も塑性加工に含まれます。
この方法は、銅の優れた延性を活かした加工技術と言えます。
加工硬化にも注意が必要で、複雑な形状の場合は複数回の工程や熱処理を伴います。
ボルトや部品を通すための「穴あけ加工」
穴あけ加工は、ドリルなどの工具を用いて銅材に穴を開ける基本的な加工です。
ボルトやネジを通すための穴や、部品の位置決め、配線用の通し穴など、その目的は多岐にわたります。
銅は粘り気が強いため、穴あけ加工時には切りくずが長くつながりやすいという特徴があります。
この切りくずがドリルに巻き付いたり、穴の中に詰まったりすると、工具の破損や加工精度の低下を招きます。
そのため、切りくずを細かく分断できるようなドリルの選定や、ステップフィードなどの工夫が重要です。
また、高い熱伝導性による工具の摩耗を防ぐため、切削油を適切に使用し、冷却と潤滑を行う必要があります。
複数の銅部品を熱で接合する「溶接」
溶接は熱を加えて銅の部品同士を溶かし一体化させる接合方法です。しかし銅は熱伝導率が極めて高いため溶接が難しい材料として知られます。
溶接箇所に加えた熱が母材全体に素早く拡散してしまい溶融池を形成するのに大きなエネルギーが必要となります。熱が広範囲に伝わることで材料の歪みや変形も発生しやすくなります。
代表的な銅の溶接方法にはTIG溶接やレーザー溶接などがありますが、いずれも高い技術を要します。接合後の表面処理として耐食性や導電性を向上させるためにメッキが施されることもあります。
高精度な銅加工を実現するための3つのポイント
銅の特性に起因する加工の難しさを克服し、高精度な部品を製作するためには、いくつかの重要なポイントが存在します。
工具の選定から加工条件の設定、そして専門的なノウハウまで、総合的なアプローチが求められます。
これらのポイントを押さえることで、銅の精密加工における品質の安定化と生産性の向上が期待できます。
ここでは、高精度な銅加工を実現するために特に重要となる3つの要素について解説します。
加工条件に合わせた適切な工具を選定する
高精度な銅加工を行う上で、工具の選定は最も重要な要素の一つです。
銅の粘り気による切りくずの絡みつきを防ぐため、すくい角が大きく、切れ味の鋭い工具が適しています。
また、高い熱伝導性に起因する工具の摩耗対策として、耐熱性や耐摩耗性に優れた材質や、熱をためにくいコーティングが施された工具を選ぶことが有効です。
特に、切りくずを細かく分断し、スムーズな排出を促すための刃先形状を持つ工具は、仕上げ面の品質向上と工具寿命の延長に貢献します。
加工内容や使用する銅の種類に応じて、これらの要素を総合的に判断し、最適な工具を選択する必要があります。
切削油を活用して加工時の熱を管理する
銅加工において発生する熱は、加工精度や工具寿命に直接的な影響を及ぼすため、その管理が不可欠です。切削油は、この熱を効果的に除去する冷却作用と、工具とワーク間の摩擦を低減する潤滑作用を併せ持ちます。
銅加工では、冷却性能を重視する場合には水溶性切削油が有効ですが、潤滑作用を重視する場合は不水溶性切削油が優れています。不水溶性切削油の中でも、銅腐食性がある活性形は避けるべきとされています。
一方、不活性型油性切削油は、銅・真鍮・アルミなどの非鉄金属に対して変色や腐食の心配が少ないため、外観重視の加工や精密部品の仕上げ加工に多く用いられます。
加工の目的や素材に応じて適切な切削油を選ぶことで、工具刃先の温度上昇を抑制し、摩耗を防ぐことが可能です。また、潤滑作用によって切りくずの排出を助け、構成刃先の発生を抑える効果も期待できます。適切な種類の油を選び、十分な量を加工点に供給することが、安定した加工の実現につながります。
銅加工の実績が豊富な専門業者に相談する
銅加工は特殊なノウハウを要するため、実績の豊富な専門業者に依頼することが成功の鍵です。
専門の会社は、銅の材質や形状に応じた最適な加工方法、工具選定、加工条件設定の知見を蓄積しています。
過去の加工実績や事例を確認し、自社が求める品質や精度の加工が可能かを見極めることが重要です。
複数の企業に見積もりを依頼し、技術力だけでなく、納期や費用、対応力を比較検討するべきです。
インターネットで「銅加工会社」などと検索し、多くの加工実績を持つ企業を探すことも一つの方法。
試作1件からでも対応してくれる会社もあるため、まずは問い合わせてみると良いでしょう。
知っておきたい銅の種類とそれぞれの特徴
一口に銅といっても、その純度や添加される元素によって様々な種類が存在し、それぞれ異なる特性を持っています。
加工を検討する際には、その材料が持つ特徴を理解し、用途に適したものを選ぶことが不可欠です。
代表的なものに、純度の高い純銅と、他の金属を加えて特性を向上させた銅合金があります。
ここでは、加工の現場でよく扱われる銅の種類を挙げ、それぞれの特徴や主な用途について解説します。
導電性に優れた「純銅(無酸素銅・タフピッチ銅)」
純銅は、銅の含有率が99.9%以上のものを指し、その中でも不純物の含有量によって種類が分かれます。
代表的なのが無酸素銅で、酸素をほとんど含まず、極めて高い導電性と熱伝導性を持ちます。
この特性から、電子部品やオーディオケーブルなどに広く利用されます。
もう一つはタフピッチ銅であり、微量の酸素を含んでいますが、導電性や加工性に優れ、安価なため汎用性が高い材料です。
電線やバスバーなど幅広い用途で使われます。
ただし、タフピッチ銅は高温の還元性雰囲気中では水素脆化を起こす可能性があるため、溶接など高温での加工には注意が必要となります。
強度や加工性を向上させた「銅合金(黄銅・青銅)」
銅合金は、銅に亜鉛や錫、ベリリウムなどの元素を添加して、強度や耐食性、加工性といった特性を向上させた材料です。
代表的なものに黄銅(真鍮)があり、これは銅と亜鉛の合金で、優れた加工性が特徴です。
水道の管やバルブ、楽器などに用いられます。
また、青銅は銅と錫の合金で、耐食性や耐摩耗性に優れているため、歯車や軸受などに使われます。
その他にも、高い強度とばね性を持つベリリウム銅は、コネクタやスイッチの線材、帯材として電子部品に不可欠な材料です。
これらの銅合金は、純銅に比べて切削性が改善されているものも多くあります。
まとめ
銅は高い熱伝導性や電気伝導性、粘り気といった特性から加工が難しい金属とされます。
主な加工方法には、切削、切断、曲げ、穴あけ、溶接などがあり、製品の目的や形状に応じて選択されます。
高精度な加工を実現するためには、鋭利で耐摩耗性に優れた工具の選定、切削油による熱管理、そして専門知識を持つ業者への依頼が重要なポイントです。
銅には導電性に優れた純銅(無酸素銅、タフピッチ銅)や、強度を高めた銅合金(黄銅、青銅)など様々な種類があり、それぞれの特性を理解した上で材料選定と加工方法を決定する必要があります。
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