リンチピン、パイプピン

製品に関する
お見積もり
ご相談はこちら

close

精密加工品

SUJ2とは?軸受鋼の特性・用途・加工方法をわかりやすく解説

SUJ2

SUJ2とは、ベアリング(軸受)に代表される高炭素クロム軸受鋼鋼材の一種です。
この材質は、優れた硬度と耐摩耗性を持ち、繰り返し荷重に強いという特性から、幅広い用途で活用されています。

この記事では、SUJ2の基本的な性質から具体的な用途、加工や熱処理のポイント、さらには他の鋼材との違いまで、技術者や購買担当者向けに詳しく解説します。

SUJ2とはベアリングなどに用いられる高炭素クロム軸受鋼のこと

SUJ2とは、JISG4805で規格が定められた高炭素クロム軸受鋼鋼材、いわゆるベアリング鋼の一種です。
この鋼種は、鉄に炭素(C)を約1%、クロム(Cr)を約1.5%含むのが成分・組成上の特徴で、焼入れにより非常に硬い金属組織を得られます。

この特性から、高い硬度と耐摩耗性が要求されるベアリングの部品に使われます。
海外の規格では、アメリカのAISI52100やドイツのDIN100Cr6などがSUJ2の類似鋼に該当し、世界中で広く使用されている金属です。
SUJ2素材は、その優れた性質から軸受以外の用途にも広く展開されています。

SUJ2が持つ優れた3つの機械的特性

SUJ2は、その化学成分と熱処理によって優れた機械的性質を発揮する鋼材です。この材料は特に硬度、耐摩耗性、そして転がり疲れ強さに優れています。SUJ2鋼材の比重は7.83または7.85であり、焼入れ焼戻し後の引張強さは用途に応じて調整されるものの、非常に高いレベルを誇ります。

また、縦弾性係数(ヤング率)は約208GPaと、他の鉄鋼材料と同等の値を示します。これらの性質が組み合わさることで、SUJ2は過酷な条件下で使用される部品の材料として高い信頼性を有しています。

1. 焼入れによって得られる高い硬度と耐摩耗性

SUJ2の最大の特徴の一つは、適切な焼入れ処理によって得られる極めて高い硬度です。
熱処理後の硬さは、ビッカース硬さでHV800程度、ロックウェル硬さでHRC60以上に達します。
この高い硬度は、組織中に炭素とクロムが結合して形成される硬質な炭化物粒子が均一に分散することで実現します。

この硬い組織が、部材同士が接触・摺動する際の摩耗を防ぎ、優れた耐摩耗性を発揮する要因となります。
そのため、SUJ2は長期間にわたって初期の性能を維持することが求められる機械部品に不可欠な材料です。

2. 繰り返し荷重に耐える優れた転がり疲れ強さ

SUJ2は、ベアリングのように繰り返し高い応力がかかる用途で真価を発揮する、優れた転がり疲れ強さを備えています。
ベアリングが回転する際、内外輪と転動体の接触部には極めて高い圧力が繰り返し加わり、これが材料の疲労破壊を引き起こす原因となります。

SUJ2は、高清浄度鋼の製造技術により、材料内部の非金属介在物を極限まで低減しています。
これにより、応力集中を引き起こす内部欠陥が少なくなり、微小な亀裂の発生と進展を抑制し、高い転がり疲れ寿命を実現します。

3. 熱処理後も寸法が安定しやすい

精密部品に用いられる材料にとって、熱処理による寸法変化の少なさは非常に重要な要素です。
SUJ2は、焼入れ・焼戻しといった熱処理を経ても、寸法変化が比較的小さく、形状が安定しやすいという利点を持ちます。

これは、適切な熱処理プロセスを選択することで、組織変態に伴う体積変化をコントロールできるためです。
この寸法安定性の高さにより、ミクロン単位の精度が要求されるベアリング部品や精密シャフトなどにおいて、熱処理後の追加工数を削減し、高精度な製品を安定して製造することが可能になります。

SUJ2の代表的な用途を具体例で紹介

SUJ2の優れた特性は、その代表的な用途であるベアリングに限りません。
高い硬度と耐摩耗性、転がり疲れ強さを活かし、精密機械のシャフトや軸、金型のガイドピンといった摺動部品にも広く採用されています。

さらには、その硬さから刃物や一部の切削工具の材料としても利用されるなど、産業界の様々な分野で重要な役割を担う鋼材です。
ここでは、具体的な用途例を挙げて紹介します。

ボールベアリングやローラーベアリング

SUJ2の最も代表的な用途は、ボールベアリングやローラーベアリングといった転がり軸受です。
ベアリングは、回転する軸を支え、摩擦を低減させる重要な機械要素であり、その構成部品である内外輪や転動体(ボールやローラー)には極めて高い性能が要求されます。

特に、転動体である鋼球やローラーは、運転中に繰り返し高い接触圧力を受けるため、SUJ2が持つ高い硬度、優れた耐摩耗性、そして何よりも高い転がり疲れ強さが不可欠です。
これらの特性により、ベアリングは長期間にわたって滑らかな回転を維持できます。

精密機械に使われるシャフトやガイド

SUJ2はその高い硬度と耐摩耗性、そして熱処理後の優れた寸法安定性から、精密機械の摺動部品にも多用されています。
例えば、リニアモーションガイドのレールやシャフト、精密な動きが求められる装置のガイドロッドなどが挙げられます。

これらの部品は、他の部品と接触しながら正確な運動をガイドする役割を担うため、表面の摩耗に強く、長期間にわたって高い寸法精度を維持する必要があります。
SUJ2はこれらの要求を満たす材料として、FA機器や工作機械、計測機器などの分野で広く活用されています。

金型のガイドポストやリニアブッシュ

プレス金型や射出成形金型において、上下の型を正確に位置合わせするためのガイドポストやガイドブッシュ、リニアブッシュにもSUJ2が使用されます。
金型は、生産時に非常に大きな力がかかり、ガイド部品は常に高い面圧と摺動にさらされる過酷な環境にあります。

SUJ2をこれらの部品に用いることで、優れた耐摩耗性によってかじりや摩耗を防ぎ、金型の長寿命化に貢献します。
また、高い疲労強度により、繰り返しの型締め動作にも耐えうる信頼性を確保し、安定した製品の生産を支える重要な役割を果たしています。

SUJ2を加工する際のポイント

SUJ2の加工を検討する上で最も重要なポイントは、熱処理の状態によって加工方法が大きく異なる点です。
熱処理前の焼なましされた「生材」の状態では切削加工が可能ですが、焼入れ後の高硬度状態では切削が困難になり、研削加工が主体となります。

そのため、製品の設計段階から熱処理のタイミングと加工工程を考慮に入れる必要があります。
SUJ2の切削性は、炭素含有量が高いため快削鋼などと比較すると良好とは言えませんが、適切な工具と加工条件を選定することで対応可能です。

熱処理前の「生材」は切削加工が可能

市場に流通しているSUJ2の素材は、通常、球状化焼鈍という熱処理が施された「生材」の状態です。
この状態の硬度はHBW200程度と比較的軟らかいため、旋盤による外形加工やフライス盤による溝加工、ドリルによる穴あけといった一般的な切削加工を行えます。

ただし、SUJ2は炭素鋼であるS45Cなどと比較して炭素含有量が多く、クロムも含まれているため、工具の摩耗が進行しやすい傾向にあります。
そのため、加工の際には、超硬工具の使用や切削速度の調整など、工具寿命を考慮した条件設定が重要になります。

熱処理後の「高硬度材」は研削加工で仕上げる

焼入れ焼戻しといった熱処理を施した後のSUJ2は、HRC60を超える非常に高い硬度を持つため、一般的な刃物を用いた切削加工は極めて困難です。
そのため、熱処理後の加工は、砥石を用いて材料表面をわずかずつ削り取る研削加工が主な方法となります。

円筒研削盤や平面研削盤などを用いた研磨によって、ミクロン単位の高い寸法精度や滑らかな表面粗さを実現します。
精密な公差が要求されるベアリングの軌道面やシャフトの摺動部など、最終的な仕上げ工程として研削加工は不可欠なプロセスです。

SUJ2の性能を最大限に引き出す熱処理プロセス

SUJ2の優れた特性は、適切な熱処理プロセスを経て初めて発揮されます。
目的の硬度や靭性を得るための焼入れ・焼戻しや、加工性を改善するための焼なましが代表的な処理です。
特に焼入れでは、加熱温度や冷却速度の管理が不適切だと、変形や割れの原因となるため注意が必要です。

また、表面のみを硬化させる高周波焼入れも適用可能です。
素材の性能を引き出すためには、球状化焼鈍で炭化物を球状に整えるなど、目的に応じた熱処理の選択が極めて重要です。

焼入れ・焼戻しによる硬度と靭性の調整

SUJ2の性能を決定づける最も重要な熱処理が、焼入れと焼戻しです。
まず、830℃〜850℃程度の温度に加熱した後、油中で急冷する「焼入れ」を行うことで、マルテンサイトと呼ばれる非常に硬い組織に変態させます。

しかし、焼入れままの状態では硬い反面、脆く(靭性が低く)、割れやすい性質を持っています。
そこで、150℃〜200℃程度の比較的低い温度で再加熱する「焼戻し」を行い、硬さをわずかに低下させる代わりに、粘り強さである靭性を向上させます。
この焼戻し温度を調整することで、用途に応じた硬度と靭性のバランスを得ることが可能です。

他の鋼材とSUJ2はどこが違う?材料選定のポイント

材料選定を行う際には、SUJ2と他の鋼材との違いを理解することが重要です。
例えば、汎用的なS45CやSCM435、工具鋼であるSKD11など、類似した用途で比較される材料は数多く存在します。

選定のポイントは、要求される硬度、耐摩耗性、靭性、そしてコストのバランスを考慮することです。
各メーカーから様々なサイズや形状の材料が供給されているため、設計仕様に合った最適な材料を見極める必要があります。
ここでは代表的な鋼材との比較を通じて、SUJ2の位置づけを明確にします。

S45C(機械構造用炭素鋼)との比較

S45Cは、炭素含有量が約0.45%の代表的な機械構造用炭素鋼で、汎用性が高く安価な点が特徴です。
SUJ2と比較すると、炭素量とクロム含有量が少ないため、焼入れ後の最高硬度や耐摩耗性ではSUJ2が大きく上回ります。
S45Cも焼入れによって硬度を高めることは可能ですが、HRC55程度が上限となります。

そのため、ベアリングのように極めて高い硬度と耐摩耗性が求められる用途にはSUJ2が選定されます。
一方、中程度の強度が求められるシャフトや歯車など、コストを重視する場合にはS45Cが適しています。

SCM435(クロムモリブデン鋼)との比較

SCM435はクロムに加えてモリブデンを含有するクロムモリブデン鋼(クロモリ鋼)です。
SUJ2が高い表面硬度と耐摩耗性に特化しているのに対し、SCM435は焼入れ性が良く、材料の芯部まで硬化しやすい特徴を持ちます。

これにより、高い強度と靭性を両立させることが可能で、ボルトや歯車、クランクシャフトなど、強靭さが求められる構造部品に広く用いられます。
耐摩耗性を最優先するならSUJ2、材料全体の強度や靭性を重視し、衝撃がかかるような用途にはSCM435が選ばれる傾向にあります。

SKD11(合金工具鋼)との比較

SKD11は冷間金型用の合金工具鋼でありSUJ2よりもさらに多くの炭素(約1.5%)とクロム(約12%)を含んでいます。
この豊富な合金元素によりSKD11は焼入れによって極めて高い硬度と優れた耐摩耗性を発揮し熱処理による寸法変化もSUJ2より少ないという特徴を持ちます。

そのためプレス用の抜き型やゲージなどより過酷な摩耗環境や高い寸法精度が要求される用途に使用されます。
一方でSKD11はSUJ2よりも靭性が低く価格も高価です。
コストと要求性能のバランスを考慮して使い分けられます。

鉛フリー快削鋼SUJ2SとSUJ2の違い

近年、環境負荷低減の観点から鉛を含まない快削鋼の需要が高まっており、SUJ2にも鉛フリー快削鋼「SUJ2S」が存在します。
この「S」は、硫黄(S)を添加することで被削性を向上させていることを示し、鉛快削鋼と同等の加工性を実現しています。
SUJ2は優れた機械的特性を持つ一方で、耐食性は高くありません。

大気中で容易に錆びるため、防錆対策が必須です。
一方、ステンレス鋼であるSUS440Cはニッケルやクロムを多く含み高い耐食性を持ちますが、SUJ2とはコストや特性が異なります。
過去にはSUJ3といった鋼種も存在しましたが、現在はJIS規格から削除されています。

まとめ

SUJ2は、高炭素クロム軸受鋼としてJIS規格に定められた鋼材です。
焼入れによりHRC60以上の高い硬度と優れた耐摩耗性を得られ、繰り返し荷重に対する転がり疲れ強さが高いという特徴を持ちます。

この特性から、ボールベアリングやローラーベアリングの主要材料として広く使用されるほか、精密機械のシャフトや金型のガイド部品など、高い硬度と耐久性が求められる多様な用途で活用されています。
加工においては、熱処理前の生材の状態では切削が可能ですが、焼入れ後は研削加工で仕上げるのが一般的です。
S45CやSCM435といった他の鋼材と比較し、特に耐摩耗性を重視する場面で選定されます。


          Machining Contact
contact

精密加工のご相談
お問い合わせはこちら