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アイボルトの耐荷重について|JIS規格別の目安と安全な使い方

アイボルトは、重量物の吊り上げや運搬に不可欠な部品ですが、その耐荷重を正しく理解し、安全に使用することが極めて重要です。
耐荷重はJIS規格によって目安が定められており、材質やサイズ、そして使用状況によって大きく変動します。

本記事では、JIS規格に基づいたアイボルトの耐荷重一覧を示すとともに、事故を防ぐための安全な使い方や点検項目、さらにはJIS規格品では対応できない場合の選択肢について解説します。

アイボルトの耐荷重を理解するために知っておきたい基本知識

アイボルトの耐荷重を正しく評価するためには、その基準となる規格や荷重に関する用語の理解が不可欠です。
日本では、工業製品の品質や安全性を保証するためにJIS規格が定められており、アイボルトもこの規格に基づいて製造運用されるのが一般的です。

また、「安全な使用荷重」と「破断荷重」は異なる意味を持つため、これらの違いを明確に認識しておく必要があります。

耐荷重の基準となるJIS規格(JIS B 1168)とは

アイボルトの耐荷重を判断する上で基本となるのが、JIS B 1168という規格です。
この日本の産業規格では、アイボルトの形状や寸法、使用する材料、機械的性質、そして最も重要な使用荷重などが詳細に定められています。
市販されている多くのアイボルトは、この規格に準拠して製造されており、製品にJISマークが付いているものは、規定された品質基準を満たしていることの証明となります。

この規格で示される使用荷重は、アイボルトを垂直に吊り上げた場合の安全な荷重の最大値を示したものです。
したがって、アイボルトを選定する際には、まずこの規格で定められた数値を確認することが安全確保の第一歩となります。

安全な使用荷重と破断荷重の違いを解説

アイボルトの強度を示す指標には「使用荷重」と「破断荷重」があり、両者は明確に区別されます。
「破断荷重」とは、そのアイボルトが物理的に破壊に至る最大荷重を指します。
一方、「安全使用荷重」は、破断荷重に対して一定の安全率を考慮して設定された、実用上で超えてはならない保証荷重のことです。

安全率は通常3倍から5倍程度で設定されており、計算式としては「安全使用荷重=破断荷重÷安全率」となります。
この安全率には、予期せぬ衝撃や部材の劣化などが考慮されています。
現場で扱うべき数値は、常にこの安全使用荷重であり、吊り荷の重量がこの値を超えないように厳密な計算と管理が求められます。

【一覧表】JIS規格に基づくアイボルトの耐荷重

アイボルトの耐荷重は、JIS規格において材質と呼び径(ねじのサイズ)ごとに定められています。
一般的に使用される材質は、炭素鋼であるSS400(鉄)と、耐食性に優れたステンレス(SUS)です。
両者は同じ呼び径でも耐荷重が異なるため、使用環境や吊り上げるものの重量に応じて適切な材質を選定する必要があります。

ここでは、それぞれの材質について、代表的な呼び径ごとの耐荷重の目安を一覧で紹介します。

SS400(鉄)製アイボルトの呼び径別耐荷重の目安

一般的に最も広く流通している材質がSS400(鉄)製のアイボルトです。
JIS規格に基づいた垂直吊りでの安全使用荷重の目安は、呼び径によって細かく規定されています。
例えば、m8では0.78kN(約80kgf)、m10では1.18kN(約120kgf)、m12では1.77kN(約180kgf)、m16では2.94kN(約300kgf)となります。
さらに大きなサイズでは、m20で4.90kN(約500kgf)、m24で7.06kN(約720kgf)、m30で11.8kN(約1200kgf)、m36で17.7kN(約1800kgf)が目安です。

m4,m5,m6といった小さなサイズも存在しますが、重量物の吊り上げには適していません。
なお、日本ではミリねじが主流ですが、海外製品ではインチ規格(例:3/8インチ)のものもあるため、互換性には注意が必要です。

ステンレス(SUS)製アイボルトの呼び径別耐荷重の目安

ステンレス(SUS)製のアイボルトは、耐食性や耐熱性に優れており、屋外、化学薬品を扱う工場、食品加工施設などで主に使用されています。一般的にはSUS304という材質が多く用いられます。

アイボルトの強度については、同じ呼び径で比較した場合、ステンレス製(SUS304)と鉄製(SS400)で同等、あるいはステンレス製の方が高い耐荷重を持つ場合があることが示されています。例えば、M12のアイボルトでは、ステンレス製(SUS304)で220kgfの使用荷重が目安とされている資料もあります。これは、鉄製(SS400)のM12アイボルトの使用荷重と同等またはそれ以上となることがあります。

したがって、ステンレス製のアイボルトを選定する際は、耐食性というメリットだけでなく、製品ごとの強度を十分に理解し、必ずメーカーが提示する仕様値を確認することが重要です。

使用荷重が変わる!アイボルトを安全に使うための3つのポイント

アイボルトに表示されている耐荷重は、あくまで「垂直に吊り上げた」場合の理想的な条件下での数値です。
実際の現場では、吊り方や取り付け方がこの耐荷重に大きく影響を及ぼし、誤った使い方をすると強度が大幅に低下してしまいます。

重大な事故を未然に防ぐためには、吊り角度の原則や複数個使用する場合の注意点、そして正しい取り付け方法を遵守することが不可欠です。

原則は垂直吊り!横吊り・斜め吊りの危険性

アイボルトの安全使用荷重は、リングの真上、つまり垂直方向に荷重がかかることを前提としています。
横吊りや斜め吊りを行うと、ねじの根元部分に曲げの力(曲げモーメント)が集中し、テコの原理で非常に大きな負荷がかかります。
これにより、耐荷重は急激に低下し、最悪の場合は破断に至ります。
特に吊り角度が45度を超えると、垂直吊りの場合に比べて強度が3分の1以下にまで落ちるとされ、大変危険です。

そのため、JIS規格のアイボルトを横方向や斜め方向の吊り作業に使用することは原則として認められていません。
どうしても横吊りが必要な場合は、後述するマルチアイボルトなど、専用の吊り具を使用しなければなりません。

2個吊りを行う際の吊り角度と耐荷重の関係

重量物を2個のアイボルトで吊り上げる場合、それぞれのアイボルトにかかる荷重は吊り角度によって大きく変化します。
吊り紐の角度が広がるほど、アイボルトには吊り荷の重量以上の張力がかかるため、使用荷重を下げて計算する必要があります。
例えば、2個吊りでの吊り角度が60度の場合、1個あたりの使用荷重は垂直吊りの半分(0.5倍)にまで減少します。
角度が90度になると約0.7倍、120度では1倍の張力がかかるため、2個で吊っていても1個あたりの負荷は垂直吊り時と同じになってしまいます。

なお、4個吊りの場合でも、荷物の重心や形状によって荷重が均等に4点にかかるとは限らないため、安全計算上は対角線上の2個に全荷重がかかるものとして考えるのが一般的です。

座面を密着させ、リングの向きを揃えて取り付ける

アイボルトを安全に使用するためには、取り付け方法も極めて重要です。
まず、アイボルトの座面(根元の平らな部分)と、取り付け対象物の表面を隙間なく完全に密着させなければなりません。
もし隙間があると、吊り上げた際にボルトに曲げの力が働き、強度が著しく低下します。

相手材のねじ穴が深いなどの理由で座面が密着しない場合は、適切な長さのロングアイボルトを使用するか、ワッシャー(シム)を挟んで隙間をなくす処置が必要です。
さらに、吊り上げる力の方向と、アイボルトのリングの面を必ず一致させる必要があります。
リングの向きが異なると、リングやボルトにねじれの力が加わり、これもまた強度低下や破損の原因となります。

事故を防ぐために使用前に確認すべき点検項目

アイボルトは吊り作業で繰り返し使用されるため、見た目には分からなくても金属疲労や摩耗が進行している可能性があります。
劣化したアイボルトを使い続けることは、重大な落下事故に直結する危険な行為です。

安全を確保するためには、作業を開始する前に必ず目視による点検を行い、少しでも異常が見られた場合は使用を中止し、新品と交換する体制を整えておくことが求められます。

本体に変形・摩耗・亀裂がないかを目視でチェックする

使用前の点検では、まずアイボルト本体の外観に異常がないかを目視で確認します。
リング部分やねじの根元に、目に見える曲がりや伸びといった変形がないかを入念に調べます。
特に、ワイヤーロープやシャックルが接触するリングの内側は摩耗しやすいため、新品時と比較して著しく削れていないかを確認します。

また、表面にサビや傷を起点とした微細な亀裂が発生している場合、内部で疲労が進行している可能性があり大変危険です。
これらの変形、摩耗、亀裂のいずれか一つでも発見されたアイボルトは、強度が著しく低下しているため、絶対に使用してはいけません。

ねじ山の損傷やサビの有無を確認する

アイボルト本体の外観と合わせて、ねじ部の状態確認も不可欠な点検項目です。
ねじ山に打痕による潰れや欠けなどの損傷があると、相手側のめねじにスムーズに挿入できず、無理に締め込むと固着や破損の原因になります。
また、正しく締め付けられないことで座面が密着せず、前述したような強度低下を招く恐れもあります。

さらに、ねじ部に発生したサビは、見た目の問題だけでなく、ねじの断面積を減少させて強度を低下させる要因です。
特に屋外や湿度の高い環境で使用した後は、水分を拭き取り、防錆油を塗布するなどのメンテナンスがサビの進行を防ぎます。
点検時にねじ山の損傷や深刻なサビが見つかった場合は、安全のために使用を中止してください。

JIS規格品では対応できない重量物を吊る場合の選択肢

JIS規格のアイボルトは汎用性が高く広く使われていますが、吊り上げる対象物が極めて重い場合や、複雑な吊り方をしなければならない場合には、JIS規格品の耐荷重や機能では対応しきれないケースがあります。
そのような状況では、より高い安全性と性能を持つ特殊な吊り具の選定が必須です。

選択肢としては、横方向の力に対応できる回転式のボルトや、より強度の高い材質で製造された製品などが挙げられます。

360度回転して横方向の力にも強いマルチアイボルト

JIS規格のアイボルトが原則として垂直吊り専用であるのに対し、横吊りや斜め吊り、吊り荷の反転作業など、あらゆる方向からの荷重に対応できるのがマルチアイボルトです。
この製品は、本体にベアリングが内蔵されており、荷重がかかった方向にリング部分が360度自由に回転し、さらに180度傾動する構造になっています。

これにより、ボルトの根元に危険な曲げモーメントが発生するのを防ぎます。
製品によっては、同じねじ径のJIS規格アイボルトの3倍以上の使用荷重を持つものもあり、安全性が格段に向上します。
金型の反転作業や重量のある機械設備の搬入・据付など、複雑で危険を伴う吊り作業において効果を発揮します。

より高い強度を持つ高張力鋼を使用したアイボルト

吊り荷の重量がJIS規格品の耐荷重を大幅に超える場合には、材質そのものを見直す必要があります。
一般的なアイボルトがSS400という普通鋼でできているのに対し、より高い引張強度を持つ高張力鋼(ハイテン材)やSCM材などの特殊合金鋼を用いて製造された高強度アイボルトが存在します。
これらの製品は、熱処理などを施すことで組織を強化しており、同じ呼び径のJIS規格品と比較して数倍の耐荷重性能を誇ります。
大型の金型や建設機械の部品、プラント設備といった、数十トンクラスの超重量物を吊り上げる際に選定されます。

ただし、非常に高い強度が求められるため、使用にあたってはメーカーが指定する仕様、トルク管理、点検基準などを厳守することが前提です。

まとめ

アイボルトの耐荷重はJIS規格によって呼び径や材質ごとに定められていますが、この数値は垂直吊りという理想的な条件下での値です。
実際の作業では、吊り角度や取り付け方法によって強度が大幅に低下するため、安全に使用するための原則を遵守する必要があります。
特に、斜め吊りや横吊りは原則禁止であり、2個吊りでは吊り角度が広がるほど耐荷重が減少します。

また、事故を未然に防ぐには、変形や摩耗、亀裂の有無などを確認する使用前点検が欠かせません。
JIS規格品で対応できない重量物や複雑な吊り作業には、マルチアイボルトや高張力鋼製ボルトといった専用品の利用を検討します。


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