精密加工品
ステンレスの成分一覧|SUSの種類別に主成分と金属の役割を解説
ステンレスの成分は、鉄を主成分とし、クロムやニッケルといった金属を特定の割合で配合することで成り立っています。
JIS規格ではSUSという記号で多くの種類が規定されており、化学成分の比率によって特性が大きく異なります。
この記事では、ステンレス鋼を構成する主要な元素の役割を解説するとともに、代表的なSUSの種類別に成分の値を示した一覧表を紹介します。
用途に適した材料を選定するためには、各成分がもたらす影響を理解することが重要です。

ステンレス鋼とは?鉄を主成分とする合金鋼の基本を解説
ステンレス鋼とは、鉄(Fe)を主成分(50%以上)とし、合金成分としてクロム(Cr)を10.5%以上含むさびにくい合金鋼の総称です。
英語では「StainlessSteel」と表記され、「Stain(錆び・汚れ)less(ない)Steel(鋼)」が名前の由来となっています。
鉄は本来さびやすい金属ですが、クロムを添加することで、鋼の表面に「不動態皮膜」と呼ばれる非常に薄い保護膜が形成されます。
この皮膜がさびの発生と進行を防ぐため、優れた耐食性を発揮します。
ステンレスの特性を決める5つの主要成分とその役割
ステンレス鋼の多様な特性は、主成分である鉄に加える様々な合金元素の組み合わせによって決まります。
特に「クロム」「ニッケル」「モリブデン」「炭素」は、耐食性や強度、加工性といった性能を大きく左右する主要な成分です。
これらの元素がそれぞれどのような役割を担い、錆や腐食を防ぎ、ステンレス特有の性質を生み出しているのかを理解することは、材料選定において非常に重要です。
主成分である「鉄(Fe)」の基本的な働き
ステンレス鋼において、鉄(Fe)は全体の50%以上を占める主成分であり、金属としての基本的な骨格を形成する役割を担っています。
鉄は強度や靭性といった機械的性質の土台となり、他の合金元素を固溶させることで、さまざまな特性を持つステンレス鋼を作り出すベースとなります。
しかし、鉄そのものは酸素や水と反応しやすく、非常に錆びやすい金属です。
この鉄の最大の欠点である耐食性の低さを、クロムをはじめとする他の元素を添加することによって克服したのがステンレス鋼です。
錆びにくさの要となる「クロム(Cr)」が不動態皮膜を形成する仕組み
ステンレス鋼が錆びにくい最大の理由は、成分に含まれるクロム(Cr)の働きによるものです。
クロムは非常に酸化しやすい性質を持ち、空気中の酸素と瞬時に反応して、鋼の表面に「不動態皮膜」と呼ばれる極めて薄い(1~3nm程度)保護膜を形成します。
この不動態皮膜は、緻密で安定しており、鋼材の表面を完全に覆うことで、酸素や水といった腐食因子の侵入を防ぎます。
万が一、表面に傷がついて皮膜が破壊されても、クロムが存在する限り自己修復機能によって瞬時に再生されるため、長期にわたって高い耐食性を維持できます。
耐食性と加工性を向上させる「ニッケル(Ni)」の役割
ニッケル(Ni)は、ステンレス鋼の耐食性と加工性を向上させるために添加される重要な元素です。
ニッケルは、クロムが形成した不動態皮膜をより強固にし、特に酸や塩分など、厳しい腐食環境に対する耐性を高める効果があります。
また、金属の結晶構造を安定した「オーステナイト組織」にする働きがあり、これによりステンレス鋼は靭性(ねばり強さ)と延性が増し、プレス加工や曲げ加工といった冷間加工がしやすくなります。
代表的なSUS304に約8%含まれており、ニッケルの存在がステンレスの用途を広げています。
孔食や隙間腐食への耐性を高める「モリブデン(Mo)」の効果
モリブデン(Mo)は、ステンレス鋼の耐食性をさらに向上させる目的で添加される元素です。
特に、海水や沿岸地域の大気中に含まれる塩化物イオンに対して非常に有効で、不動態皮膜を局部的に破壊して発生する「孔食(こうしょく)」や、ボルトの締結部などの隙間で発生する「隙間腐食」への耐性を著しく高めます。
この効果により、モリブデン(Mo)を添加したSUS316などのステンレス鋼は、沿岸部の建築物、船舶部品、化学プラントなど、より過酷な腐食環境下での使用に適しています。
強度と硬さに影響を与える「炭素(C)」の含有量と変化
炭素(C)は、鋼の強度と硬さを向上させるために不可欠な元素です。
ステンレス鋼においても、炭素の含有量が多いほど硬度が増し、耐摩耗性が向上します。
しかし、炭素はクロムと結びつきやすく、「クロム炭化物」を形成する性質があります。
この炭化物が結晶粒界に析出すると、その周辺で不動態皮膜を形成するためのクロムが不足し、耐食性が局部的に低下する「粒界腐食」の原因となります。
そのため、溶接などで高い耐食性を維持する必要がある場合は、炭素の含有量を極力低く抑えた「ローカーボン」のステンレス鋼(SUS316Lなど)が使用されます。
【JIS規格】ステンレス鋼の系統別・代表的な種類と成分一覧
ステンレス鋼は、日本産業規格(JIS規格)によって化学成分や物理的性質が細かく規定されており、「SUS」という記号で識別されます。
この規格は、金属の結晶構造の違いから、主に「オーステナイト系」「フェライト系」「マルテンサイト系」「オーステナイト・フェライト(二相)系」「析出硬化系」の5つに大別されます。
それぞれの系統は特有の成分構成を持ち、耐食性、強度、磁性、加工性などが異なります。
ここでは、各系統の代表的な鋼種と、そのJIS規格における主要な成分を紹介します。
オーステナイト系ステンレス(SUS304など)の成分構成
オーステナイト系ステンレスは、クロムを約18%、ニッケルを約8%含むSUS304が最も代表的です。
この系統は、ニッケルの添加によって常温でもオーステナイト組織が安定しているため、非磁性で、優れた耐食性と冷間加工性を持ちます。
SUS301はSUS304よりニッケルを減らし、加工硬化性を高めてばね材などに使用されます。
SUS316はモリブデンを添加して孔食への耐性を高め、さらに炭素量を低減したSUS316Lは、溶接部の耐粒界腐食性を向上させています。
汎用性が高く、ステンレス鋼の中で最も多く使用されているのがこのオーステナイト系です。
フェライト系ステンレス(SUS430など)の成分構成
フェライト系ステンレスは、クロム(Cr)を主成分とし、ニッケル(Ni)を含まないか、含んでもごく少量であることが特徴です。
代表的な鋼種であるSUS430は、約18%のクロムを含み、炭素含有量は低く抑えられています。
オーステナイト系に比べて安価で、熱処理による硬化はできませんが、磁性を持ち、熱膨張率が低く、応力腐食割れに強いという利点があります。
耐食性はSUS304よりやや劣りますが、一般的な環境では十分な性能を持つため、厨房機器、建材、自動車の排気系部品などに広く利用されています。
マルテンサイト系ステンレス(SUS410など)の成分構成
マルテンサイト系ステンレスは、クロム(Cr)と炭素(C)を主成分とするステンレス鋼です。
代表的なSUS410は、約13%のクロムと0.15%以下の炭素を含みます。
この系統の最大の特徴は、熱処理(焼入れ・焼戻し)によって金属組織がマルテンサイト組織に変化し、高い硬度と強度を得られる点にあります。
その反面、炭素含有量が高いため、耐食性は他のステンレス鋼に比べて劣ります。
この特性を活かし、刃物、ノズル、タービンブレード、シャフトなど、強度や耐摩耗性が要求される用途に主に使用されます。
オーステナイト・フェライト系(二相系)ステンレスの成分構成
オーステナイト・フェライト系(二相系)ステンレスは、その名の通り、オーステナイト相とフェライト相が混在した二相組織を持つことが特徴です。
成分としては、クロム(Cr)の含有量が高く、ニッケル(Ni)やモリブデン(Mo)も含まれます。
代表的な鋼種であるSUS329J1などは、SUS304に比べて約2倍の強度を持ち、オーステナイト系の優れた耐食性とフェライト系の高い強度、そして耐応力腐食割れ性を兼ね備えています。
海水を使用する熱交換器や化学プラントの部材など、高い強度と耐食性の両方が求められる過酷な環境で使用されます。
析出硬化系ステンレスの成分構成
析出硬化系ステンレスは、クロム(Cr)とニッケル(Ni)を基本成分とし、さらに銅(Cu)やアルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)といった元素を添加したステンレス鋼です。
この系統は、溶体化処理後に時効硬化処理という熱処理を加えることで、添加元素の金属間化合物を金属組織内に微細に析出させ、非常に高い強度を得られるのが特徴です。
代表的なSUS630は、優れた耐食性を持ちながら、マルテンサイト系に匹敵する高強度を実現できます。
航空機の部品やゴルフヘッド、高強度が要求されるシャフトなどに利用されています。
ステンレスの成分に関するよくある質問
ステンレスの成分については、その表記方法や特性に関して、実務上多くの質問が寄せられます。
例えば、「18-8」という数字の意味、製品によって磁石がつくものとつかないものがある理由、さらにはニッケルの代替として使用されるマンガン(Mn)の役割など、具体的な疑問点が挙げられます。
ここでは、そうしたステンレスの成分に関するよくある質問を取り上げ、それぞれの疑問に対して簡潔に回答します。
Q. 「18-8ステンレス」とはどのような成分のステンレスですか?
18-8ステンレスとは、約18%のクロム(Cr)と約8%のニッケル(Ni)を含むオーステナイト系ステンレス鋼の通称です。
JIS規格ではSUS304がこれに相当します。
耐食性、加工性、溶接性のバランスに優れ、家庭用の厨房用品から工業用設備まで最も広く使用されている、代表的なステンレス鋼です。
Q. ステンレスに磁石がつく・つかない製品があるのはなぜですか?
ステンレスの磁性は、主成分と金属組織の違いによって決まります。
SUS304に代表されるオーステナイト系はニッケルを含むため非磁性です。
一方、SUS430などのフェライト系やSUS410などのマルテンサイト系は磁性を持ちます。
ただし、非磁性のオーステナイト系でも、加工によって組織が変化し、弱い磁性を帯びることがあります。
Q. 食品用や医療用で使われるステンレスの成分に違いはありますか?
特定の用途に限定された成分規格はありませんが、求められる耐食性に応じて適切な鋼種が選ばれます。
食品用に広く使われるのは汎用性の高いSUS304です。
一方、人体への影響を考慮し、より高い耐食性が要求される医療用のメスやインプラントには、モリブデンを添加したSUS316やSUS316Lが使用されるのが一般的です。
まとめ
ステンレス鋼は、鉄を主成分としながら、クロム、ニッケル、モリブデン、炭素といった元素の化学成分の割合を調整することで、多様な特性を発揮する合金です。
クロムが形成する不動態皮膜によって基本的な耐食性が確保され、ニッケルはそれをさらに強化し加工性を向上させます。
JIS規格で定められたSUSの種類ごとに成分は異なり、オーステナイト系やフェライト系といった系統によって、耐食性や強度、保温性といった特性が変化します。
これらの成分と特性の関係性を理解することが、用途に応じた最適なステンレス鋼を選定する上で重要です。
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