精密加工品
アルミ板の曲げ加工|種類ごとの注意点とDIYで綺麗に曲げるコツ
アルミ板の曲げ加工は、専門的な板金加工の現場から個人のDIYまで、幅広い用途で行われています。
軽量で加工しやすい反面、割れやすいといった特有の性質を持つため、目的の形状に仕上げるにはいくつかのポイントを押さえる必要があります。
この記事では、アルミ板の基本的な特性から、プロが用いる代表的な加工方法、DIYで綺麗に曲げる手順とコツ、そして加工で失敗しないための注意点までを網羅的に解説します。

アルミ板を曲げる前に知っておきたい基本特性
アルミ板は軽量で錆びにくく加工性に優れるため多くの製品に利用されていますが、曲げ加工を行う際には特有の性質を理解しておくことが重要です。鉄などの他の金属材料と比較して柔らかく曲げやすい一方で、特定の条件下では割れ(クラック)が生じやすい側面も持ち合わせています。
また、材質(合金の種類)によって強度や伸び率が大きく異なり、曲げ加工の難易度も変わってきます。例えば、純アルミに近い1000番台は非常に柔らかく曲げやすいですが、強度が高いジュラルミン(2000番台)などは硬くてもろく、曲げ加工には適しません。このような材質ごとの特性や、後述する圧延方向、スプリングバックといった現象を事前に把握しておくことが、高品質な加工を実現する第一歩となります。
【プロ向け】アルミ板の代表的な曲げ加工方法
プロの板金加工の現場では、製品の形状や求められる精度、生産量に応じて様々な方法が用いられます。代表的なものとして、プレスブレーキを使用する「ベンダー曲げ」のほか、レーザー加工、タレパン加工、溶接加工、シャーリング加工などが挙げられます。
これらの方法は、専用の機械と金型、そして熟練した技術を要しますが、手作業では難しい高精度で複雑な形状の加工を実現します。ここでは、それぞれの加工方法の原理と特徴について解説します。
高精度な角度出しを実現する「ベンダー曲げ」
ベンダー曲げは、プレスブレーキと呼ばれる機械を使用し、V字型の溝を持つ「ダイ」と、刃物のような形状の「パンチ」の間にアルミ板を挟み込み、圧力をかけて任意の角度に曲げる加工方法です。
金型を交換することで、鋭角から鈍角、R形状(丸みを帯びた曲げ)まで、非常に高精度な角度出しが可能であり、板金加工において最も広く用いられています。
再現性が高く、同じ形状の製品を大量生産するのに適しているのが大きな特長です。
一方で、加工できる長さは機械の幅に依存し、箱のような複雑な形状を製作する際には、パンチやダイ、製品自体が機械に干渉しないよう、曲げる順番などを緻密に計算する必要があります。
円形や筒状に加工する「ロール曲げ」
ロール曲げは、3本または4本のローラー(ロール)の間にアルミ板を通し、ローラーの回転と位置調整によって板を円形や円弧状に曲げていく加工方法です。
主にタンクやダクトといった円筒状の製品や、大きなR形状を持つ部材の製作に用いられます。
ローラーの間隔や圧力を調整することで、さまざまな直径の円筒や円錐状の加工にも対応可能です。
この方法の特性上、板の端から端まで均一に曲げることが難しく、板の両端に「端曲げ(はなまげ)」と呼ばれる直線部分が残りやすいという注意点があります。
そのため、端曲げ部分を後から切断したり、別のプレス機で曲げ直したりといった追加工程が必要になる場合があります。
箱のような形状を製作する「板折り曲げ」
板折り曲げは、ボックスベンダーやパネルベンダーといった機械を使用して、アルミ板を万力のように押さえつけ、押さえとは別のブレード(刃)を振り上げて板を折り曲げる加工方法です。
ベンダー曲げとは異なり、板の全幅を一度に押さえるのではなく、加工箇所を限定して曲げられるため、箱物や筐体、コの字型のチャンネル材など、四方を囲むような形状の製作を得意とします。
特に、すでに曲げ加工が施された辺の近くをさらに曲げるような、複雑な工程に適しています。
ただし、ベンダー曲げに比べて加圧能力が低いため、加工できる板厚には制限があり、主に薄板から中厚板の加工に用いられるのが一般的です。
アルミ板の曲げ加工で失敗しないための3つの注意点
アルミ板は加工しやすい金属ですが、その特性を理解せずに作業を進めると、割れや意図しない変形といった失敗につながることがあります。
特に「圧延方向」「スプリングバック」「最小曲げ半径」という3つの要素は、加工品質を大きく左右する重要なポイントです。
これらの注意点を事前に把握し、適切な対策を講じることで、加工の成功率を大幅に高めることができます。
プロの現場はもちろん、DIYで加工を行う際にも共通する基本原則となります。
割れ(クラック)を防ぐには圧延方向の確認が不可欠
アルミ板には、製造工程の圧延によって生じる金属組織の流れの方向、すなわち「圧延方向」が存在します。
この圧延方向に平行な線で曲げようとすると、組織の目に沿って力がかかるため、外側に大きな引張応力が集中し、割れ(クラック)が発生しやすくなります。
この現象を避けるためには、曲げ線を圧延方向に対して直角、もしくは少なくとも45度以上の角度に設定することが極めて重要です。
圧延方向は、板の表面に微かに見える筋目や、購入時に添付されているミルシート(材料証明書)で確認できます。
もし方向が不明な場合は、安全を見越して斜めに曲げるなどの工夫が必要です。
この原則を守るだけで、曲げ加工における割れのリスクを大幅に低減させられます。
変形を予測して対策する「スプリングバック」現象とは
スプリングバックとは、曲げ加工機で90度に曲げたつもりでも、機械から解放すると材料の弾性によって少し角度が戻ってしまう現象のことです。
アルミニウムは鉄鋼材料と比較して弾性係数が低く、しなやかな性質を持つため、スプリングバックの発生量が小さい傾向にあります。
例えば、90度を狙って曲げても、実際には92度や93度といった鈍角になってしまうことがあります。
この現象を見越さずに加工すると、寸法精度を満たせない原因となります。
対策としては、目標とする角度よりも数度深く曲げ込む「オーバーベンディング」が一般的です。
スプリングバックの量は材質や板厚、曲げ半径によって変化するため、正確な角度を出すには、試し曲げを行って戻り量を実測し、加工条件を調整する必要があります。
材質ごとに定められた「最小曲げ半径」を遵守する
最小曲げ半径とは、その材質の板が割れることなく曲げられる、最小の内側半径(内R)のことです。
この値よりも小さい半径で無理に曲げようとすると、曲げの外側が過度に引き伸ばされてしまい、ひび割れや破断の原因となります。
この最小曲げ半径は、アルミの合金の種類(材質)や板の厚さ、そして調質(熱処理の状態)によって厳密に定められています。
一般的に、板厚が厚くなるほど、また材質の強度が高くなるほど、最小曲げ半径は大きくなる傾向にあります。
例えば、柔らかいA5052材と硬いA2017材とでは、同じ板厚でも許容される最小曲げ半径が異なります。
設計や加工の際には、使用する材質の規格を必ず確認し、指定された最小曲げ半径を下回らないようにすることが不可欠です。
【DIY編】身近な道具でアルミ板を綺麗に曲げる手順とコツ
専門的な機械がなくても、ホームセンターなどで手に入る身近な道具を使えば、薄いアルミ板であればDIYで曲げ加工が可能です。
特に小物ケースの製作や簡単なブラケット作りなど、個人の趣味の範囲で楽しむ方にとっては、手軽に始められる工作の一つです。
ただし、綺麗で安全に作業を行うためには、適切な道具の準備と、いくつかのコツを押さえておくことが大切です。
ここでは、DIYでアルミ板を曲げる際に必要な道具から、基本的な手順、そして角をシャープに仕上げるためのアドバイスまでを紹介します。
はじめに準備する道具一覧
DIYでアルミ板の曲げ加工を行うには、特別な専門工具は必ずしも必要ではありませんが、作業の精度と安全性を確保するためにいくつかの基本的な道具を揃えることを推奨します。
まず、板をしっかりと固定するための「万力」が最も重要です。
そして、曲げたい線をまっすぐに保つための「当て木」や厚みのある金属製の「角材」が2本必要になります。
実際に力を加える際には、材料を傷つけにくい「ゴムハンマー」を用意しましょう。
また、正確な寸法を測り、曲げ線を引くための「定規(さしがね)」と「カッターナイフ」も必須です。
安全に作業するため、手を保護する「作業用手袋」と、万が一の破片から目を守る「保護メガネ」の着用も忘れないようにしてください。
3ステップで実践!基本的な曲げ加工のやり方
道具が準備できたら、基本的な3つのステップに沿って作業を進めます。
まずステップ1として、曲げたい位置に定規を当て、カッターナイフで軽く数回なぞって「ケガキ線(溝)」を入れます。
この溝がガイドとなり、狙った位置で正確に曲げやすくなります。
次にステップ2では、万力に当て木を2枚挟み、その間にアルミ板を差し込みます。
このとき、先ほど入れたケガキ線が、当て木の角のラインにぴったりと重なるように位置を調整し、万力で強く固定します。
最後にステップ3として、板の飛び出している部分に手を添え、ゆっくりと均等に力をかけて目標の角度まで曲げていきます。
硬い場合はゴムハンマーで軽く叩きながら、焦らず少しずつ曲げるのが綺麗に仕上げるコツです。
角をシャープに仕上げるためのワンポイントアドバイス
DIYでアルミ板を曲げると、角が丸みを帯びてしまいがちですが、少し工夫するだけでシャープな仕上がりに近づけることができます。
そのための重要なポイントは、最初のケガキ工程にあります。
曲げ線を引く際に、カッターナイフで一度軽く引くだけでなく、複数回なぞって板厚の3分の1から半分程度の深さまでしっかりと溝を掘り込みます。
この溝が起点となることで、応力が集中し、より鋭角な折り目をつけることが可能になります。
ただし、溝が深すぎると強度が著しく低下し、曲げている最中に破断する原因にもなるため、力加減には注意が必要です。
曲げ終わった後に、もう一度当て木をして角の部分をゴムハンマーで軽く叩いて整えると、さらに直線的で美しい仕上がりになります。
複雑な形状や精密な加工は専門業者への依頼がおすすめ
DIYでのアルミ板加工は手軽さが魅力ですが、扱える板厚や加工できる形状には限界があります。
例えば、2mm以上の厚い板を曲げる、大きなR形状を作る、箱のように複数の辺を正確に曲げるといった作業は、手作業では非常に困難です。
また、高い寸法精度が求められる部品や、同じものを複数個製作する場合も、品質のばらつきが生じやすくなります。
このようなケースでは、無理に自作しようとせず、専門の板金加工業者へ依頼するのが賢明な選択です。
業者は、材質の特性を熟知しており、プレスブレーキやベンダーといった専用設備を用いて、高精度かつ高品質な加工を実現します。
図面がなくても、簡単なスケッチやイメージから相談に乗ってくれる業者も多いため、まずは一度問い合わせてみることをおすすめします。
アルミ板の曲げ加工に関するよくある質問
アルミ板の曲げ加工を検討する中で、多くの方が抱く共通の疑問があります。
例えば、アルミと一言で言っても様々な合金が存在しますが、種類によって加工のしやすさはどう違うのか、あるいはDIYで挑戦する場合、どの程度の厚さまでなら現実的に可能なのか、といった点です。
また、専門業者に依頼する場合の費用がどのように決まるのかも気になるところです。
ここでは、そうしたアルミ板の曲げ加工に関するよくある質問について、簡潔に回答していきます。
アルミ合金の種類によって曲げやすさに違いはありますか?
はい、違いがあります。
アルミ合金は添加される元素によって強度や展延性が異なり、曲げやすさが大きく変わります。
純アルミに近い1000番台や、マンガンを加えた3000番台、マグネシウムを加えた5000番台は、比較的柔らかく伸びやすいため、曲げ加工に適しています。
一方で、銅を加えた2000番台(ジュラルミン)や亜鉛を加えた7000番台(超々ジュラルミン)は高い強度を持つ反面、硬くてもろいため、曲げると割れやすく加工には専門的な技術と知識を要します。
DIYで曲げられるアルミ板の厚さはどのくらいが限界ですか?
手作業で綺麗に曲げる場合、限界の目安は一般的に厚さ1mm程度までです。
万力や当て木といった工具を使っても、1mm厚を超えると相当な力が必要となり、均一な力で真っ直ぐに曲げることが困難になります。
特に板の幅が広くなるほど難易度は上がります。
1.5mmや2mmといった厚い板を曲げたい場合は、スプリングバックも大きくなるため、手作業での精度確保は難しく、専門業者への依頼を検討するのが現実的な選択です。
業者に曲げ加工を依頼した場合の費用は何で決まりますか?
費用は主に「材料費」「加工費」「諸経費」の3つの要素で構成されます。
材料費はアルミ板の種類、板厚、サイズによって決まります。
加工費は、曲げの回数や加工の複雑さ、精度、そして製作数量に応じた機械の段取りや作業時間から算出されます。
諸経費には、プログラム作成費や管理費などが含まれる場合があります。
一般的に、一点ものや試作品は段取りコストの割合が高くなるため、単価は割高になる傾向があります。
まとめ
アルミ板の曲げ加工は、ベンダー曲げやロール曲げといった専門的な方法から、DIYで実践可能な簡易的な手法まで多岐にわたります。
加工を成功させるためには、材質ごとの特性を理解することが基本となります。
特に、割れを防ぐための圧延方向の確認、精度を出すためのスプリングバックへの対策、そして材質と板厚に応じた最小曲げ半径の遵守は、プロ・アマ問わず重要な要素です。
趣味の工作であれば身近な道具でも対応可能ですが、厚い板の加工や複雑な形状、高い精度が求められる場合は、専門の板金加工業者への依頼が確実な方法です。
目的や求める品質に応じて、適切な加工方法を選択することが求められます。
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