精密加工品
タングステン加工の方法とは?依頼できる会社と精密加工のコツ
タングステンとは、その優れた特性から様々な工業製品に利用される金属ですが、加工が非常に難しい難削材としても知られています。
この記事では、タングステンの精密加工が難しい理由から、代表的な加工の方法、そして加工を依頼できる信頼性の高い会社を選ぶためのポイントまでを解説します。
タングステン加工の基礎知識を得ることで、製品開発や部品製作を円滑に進めるための具体的なアプローチが明確になります。

タングステンとは?加工が難しい理由となる3つの特性

タングステンは、原子番号74の非常に希少な金属です。
純タングステンは銀白色の外観を持ちますが、その加工を難しいものにしている特有の物性があります。
特に、融点の高さ、硬度、そして脆い性質(脆性)が、加工における大きな障壁となります。
これらの特性を理解することが、タングステン加工の第一歩です。
以下で、それぞれの特性について詳しく見ていきます。
非常に高い融点と優れた耐熱性
タングステンは、全ての金属の中で最も高い約3,422℃という融点を持ちます。
この優れた耐熱性は、高温環境下で使用される部品の材料として非常に有利です。
しかし、加工においては、この性質が裏目に出ます。
切削加工などで発生する加工熱によって、タングステン自体は溶けにくいものの、接触する工具の刃先が先に摩耗・溶損してしまいます。
そのため、加工時の温度管理と、熱に強い工具の選定が不可欠となります。
金属の中でトップクラスの硬度と重量
タングステンは、ダイヤモンドに次ぐほどの高い硬度を誇ります。
身近な鉄やステンレス鋼といった一般的な金属とは比較にならないほど硬いため、切削や研削を行おうとすると、工具の刃がすぐに摩耗してしまいます。
この性質を利用して、炭化タングステンは超硬合金の主成分として、他の金属を削るための工具材料に用いられるほどです。
また、密度が金とほぼ同じで非常に重いという特徴も持っています。
脆く割れやすい性質(脆性)
タングステンは非常に硬い反面、靭性が低く、脆いという性質を持っています。
これは脆性と呼ばれ、ガラスのように衝撃を与えると割れたり欠けたりしやすいことを意味します。
そのため、加工中に強い衝撃や急激な負荷がかかると、チッピングと称される微小な欠けや、時には製品全体の割れを引き起こす原因となります。
この脆性を考慮し、衝撃を最小限に抑える慎重な加工が求められます。
特に炭化物は硬度を高める一方で脆性を増す要因にもなります。
タングステンの特性が活かされる主な用途例

タングステンが持つ高融点、高硬度、高密度といった他の金属にはないユニークな特性は、様々な分野で活用されています。
加工が難しいというデメリットを上回るメリットがあるため、特殊な環境下や高い性能が求められる機械部品、工業製品に欠かせない材料となっています。
ここでは、タングステンの特性が具体的にどのような製品や部品に活かされているのか、代表的な用途例を紹介します。
工具や金型などの耐摩耗性が求められる部品
タングステンの最も代表的な用途の一つが、その高い硬度と耐摩耗性を活かした工具材料です。
炭化タングステンを主成分とする超硬合金は、金属を削るための切削工具(旋盤用のチップやエンドミルなど)や、プレス加工に用いる金型の材料として広く使用されています。
これらの工具は、高速で硬い材料を加工する過酷な環境に耐える必要があり、タングステンの特性が不可欠です。
日常生活で目にする機会は少ないですが、工業製品の製造現場を支える重要な役割を担っています。
航空宇宙分野や半導体製造装置の部材
タングステンの約3,422℃という非常に高い融点と優れた耐熱性は、極端な高温にさらされる環境で真価を発揮します。
例えば、ロケットエンジンのノズルや、高温のプラズマを扱う核融合炉の内部材など、航空宇宙やエネルギー分野の最先端技術に採用されています。
また、半導体製造プロセスにおいても、シリコンウェーハを加熱するためのヒーターや電極、薄膜を形成するためのスパッタリングターゲット材として利用されます。
熱による変形が少ない性質や、銅との組み合わせで放熱性を高めた複合材料も開発されています。
放射線を遮蔽する医療機器の部品
タングステンは密度が非常に高く、X線やガンマ線などの放射線を遮蔽する能力に優れています。
従来、放射線遮蔽材としては鉛が広く用いられてきましたが、鉛は環境や人体への有害性が懸念されます。
タングステンは鉛よりも遮蔽能力が高く、かつ環境負荷が少ないため、代替材料として注目されています。
具体的な用途としては、CTスキャナ内部でX線の照射範囲を精密に制御するための「コリメータ」や、放射線治療装置の部品などに使用され、医療技術の高度化に貢献しています。
タングステン加工で用いられる代表的な5つの方法

タングステンはその特性から「難削材」の代表格とされ、一般的な金属加工の常識が通用しません。
そのため、材料の特性を理解した上で、最適な加工方法を選択する必要があります。
現在では技術の進歩により、切削や研削といった除去加工から、放電やレーザーを利用した特殊な加工法まで、様々なアプローチが確立されています。ここでは、タングステン加工で用いられる代表的な方法について、それぞれの特徴を解説します。
工具の選定が重要な「切削加工」
切削加工は、刃物を使って材料を削り取る加工法ですが、タングステンの場合はその硬さから工具の摩耗が極めて激しくなります。
そのため、工具の材質選定が非常に重要です。
一般的には、ダイヤモンドを焼き固めた「PCD(焼結ダイヤモンド)」や「cBN(立方晶窒化ホウ素)」といった、タングステンよりも硬い材料で作られた工具が使用されます。
また、脆性を考慮し、工具への衝撃を避けるために切削速度や送り量を低く設定し、慎重に加工を進める必要があります。
高精度な仕上げを実現する「研削加工」
研削加工は、高速で回転する砥石を用いて、材料の表面を少しずつ削り取っていく加工方法です。
タングステンのように硬くて脆い材料を高精度に仕上げるのに適しており、主に最終工程で寸法精度や表面の滑らかさを出すために用いられます。
使用する砥石には、ダイヤモンド砥粒が使われることが一般的です。
切削加工と同様に、加工熱や衝撃による割れ・欠けを防ぐため、砥石の回転数や送り速度といった加工条件の細かな調整が求められる加工パターンです。
複雑な形状に対応できる「放電加工」
放電加工は、電極と加工物の間に電気エネルギーを集中させて火花(アーク放電)を発生させ、その熱で材料を溶かしながら加工する方法です。
工具が直接材料に触れない非接触加工であるため、タングステンのような材料の硬さに影響されずに加工できる大きなメリットがあります。
細いワイヤー線の電極を用いる「ワイヤー放電加工」と、製品と対になる形状の電極を用いる「型彫り放電加工」があり、切削では難しい複雑な形状や微細な加工を実現できます。
熱影響を抑えられる「レーザー加工」
レーザー加工は、高エネルギーのレーザー光をレンズで集光して照射し、その熱で材料を瞬間的に溶融・蒸発させて切断や穴あけを行う非接触の加工方法です。
加工箇所にのみエネルギーを集中させることができるため、材料全体への熱影響(歪みや変質)を最小限に抑えられるのが特長です。
タングステンのような高融点の材料にも適用可能で、特に薄板の切断や微細な形状の加工において有効な手段となります。
微細な穴あけや溝入れに適した「電子ビーム加工」
電子ビーム加工は、真空中で電子銃から発生させた電子を高速に加速させ、電磁レンズで細く絞って加工物に照射する加工法です。
電子が持つ高い運動エネルギーが熱エネルギーに変換されることで、材料を瞬時に溶融・蒸発させます。レーザーよりもさらに微細で高精度な穴あけや溝入れ、溶接が可能です。
この加工法では大規模な真空装置が必要となるため、初期投資は高額になる傾向があります。
しかし、他の溶接方法と比較してランニングコストを抑えられる場合や、タクトタイムの短縮により量産品のコスト低減に貢献する可能性も指摘されています。
チタンやモリブデンなどの特殊金属の加工に適している一方で、様々な産業分野の課題解決に活用されており、幅広い用途での適用が期待されています。
タングステンの精密加工を成功させるための3つのコツ

タングステンを要求された仕様通りに精密加工するためには、単に適切な加工方法を選ぶだけでは不十分です。
材料特有の難しさを克服するための、より具体的な技術やノウハウが求められます。
ここでは、特に「チッピングの防止」「専用工具の選定」「熱変形の抑制」という3つの観点から、タングステンの精密加工を成功させるための重要なコツを解説します。
チッピング(欠け)を防ぐための適切な加工条件設定
タングステンの脆い性質は、加工中に「チッピング」と呼ばれる微小な欠けを発生させる最大の原因です。
これを防ぐためには、加工条件を非常に慎重に設定する必要があります。
例えば切削加工では、刃物が材料に入る瞬間と抜ける瞬間に衝撃が大きくなるため、その際の速度を制御するプログラムを用いることが有効です。
また、一度に大きく削ろうとせず、切り込み量を少なくして複数回に分けて加工するなど、材料に急激な負荷をかけないよう配慮することが、安定した品質を得るための鍵となります。
材料の特性を熟知した専用工具の選定
タングステンの高い硬度に対抗するには、それに打ち勝つことができる、より硬い材質の工具を選ぶことが絶対条件です。
具体的には、ダイヤモンド焼結体(PCD)や立方晶窒化ホウ素(cBN)といった超砥粒を用いた工具が選択肢となります。
しかし、単に硬いだけでなく、工具の刃先の形状(切れ味を左右するすくい角など)や、耐摩耗性・潤滑性を高めるためのコーティングの種類も、加工精度や工具寿命に大きく影響します。
材料特性と加工内容に合わせて最適な工具を選定する知見が不可欠です。
加工時の熱による変形を最小限に抑える工夫
タングステンは融点が高いものの、加工中に発生する局所的な熱は、製品の寸法精度に影響を及ぼす熱変形の原因となり得ます。
特に精密加工では、ミクロン単位の変形も許容されません。
この熱影響を最小限に抑えるため、加工点に的確にクーラントを供給し、効率的に熱を除去する工夫が必要です。
また、一度の加工で発生する熱量を抑えるために、荒加工と仕上げ加工で工程を分ける、加工時間を短くするなどの対策も有効です。
信頼できるタングステン加工会社の選び方
自社での加工が難しいタングステン製品は、専門の加工会社に依頼するのが一般的です。
しかし、どの会社でも高品質な加工ができるわけではありません。
難削材であるタングステンの加工には、特別な設備と高度な技術力が求められます。
ここでは、技術力と信頼性を見極め、自社のニーズに合ったパートナーとなる加工会社を選ぶための3つの重要なポイントを解説します。
難削材の加工実績が豊富か確認する
まず確認すべきなのは、タングステンそのものの加工実績です。
公式サイトの加工事例や製品紹介のページを見て、どのような形状や精度のものを手掛けてきたかを確認します。
加えて、タングステンだけでなく、チタンやインコネル、モリブデンといった他の「難削材」の加工経験が豊富かどうかも重要な判断材料です。
多様な難削材に対応できる会社は、材料の特性を深く理解し、それに応じた加工ノウハウを蓄積している可能性が高く、技術的な信頼性が高いと言えます。
微細加工や高精度加工に対応できる設備があるか調べる
求める製品仕様を実現できるかどうかは、その会社が保有する設備に大きく左右されます。
5軸マシニングセンタやワイヤー放電加工機、高精度な研削盤など、微細・複雑形状の加工に対応できる設備が整っているかを確認しましょう。
また、加工精度を保証するためには、加工設備だけでなく検査体制も重要です。
温度管理が徹底された検査室に、三次元測定器や形状測定器といった高精度な検査機器を備えている会社は、品質管理に対する意識が高く、信頼できるパートナーとなり得ます。
試作品1個からでも相談できる柔軟性があるか見極める
特に製品開発の段階では、量産に入る前に性能評価や検証を行うための試作品が必要になります。
そのため、「試作品1個から」「小ロット対応可能」といった柔軟な対応ができる会社を選ぶことが重要です。
問い合わせの段階で、少量生産への対応可否や、技術的な相談に親身に乗ってくれるかといった点を確認しましょう。
顧客の多様なニーズに寄り添う姿勢を持つ会社は、長期的な関係を築く上で良いパートナーとなる可能性が高いです。
タングステン加工に関するよくある質問
ここでは、タングステン加工を検討する際に、多くの方が疑問に思う点について解説します。
加工費用や他の材料との比較、発注単位など、具体的な検討段階で役立つ情報をまとめました。
タングステンの加工費用はどのくらいかかりますか?
タングステンは材料自体が高価な上、加工に時間と手間がかかるため、加工費用は高額になる傾向があります。
費用は材料の形状や純度、加工の複雑さ、精度、数量によって大きく変動するため一概には言えません。
正確な費用を知るためには、加工したい製品の図面を用意し、専門の加工業者に見積もりを依頼する必要があります。
タングステンとモリブデンでは加工の難易度はどう違いますか?
一般的にタングステンの方がモリブデンよりも加工の難易度は高いです。
タングステンはモリブデンに比べて融点が約800℃高く、硬度も優れています。
そのため、切削加工などでは工具の摩耗がより激しくなり、加工条件の設定がさらにシビアになります。
どちらも難削材ですが、特に硬さの面でタングステンの加工はより困難とされます。
1個の試作からでも加工を依頼することはできますか?
はい、依頼可能です。
多くの難削材加工を専門とする企業では、研究開発用途や製品の性能評価を目的とした、試作品1個からの製作に対応しています。
ただし、1個あたりの単価は量産品と比較すると高くなるのが一般的です。
まずは検討している加工会社に、小ロットや試作品への対応が可能か問い合わせてみましょう。
まとめ
タングステンは、高い融点、硬度、密度といった優れた特性を持つ一方で、その特性ゆえに加工が極めて難しい金属です。
加工を成功させるには、切削、研削、放電加工といった手法の中から適切なものを選択し、チッピングや熱変形を防ぐための専門的なノウハウが不可欠です。
加工を外部に委託する場合は、難削材の実績が豊富で、高精度な設備と検査体制を持ち、試作にも柔軟に対応できる信頼性の高い会社を選定することが重要になります。
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