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精密加工品

アーク溶接とは?種類・方法・コツからヒューム対策まで解説

アーク溶接

アーク溶接とは、金属の接合に用いられる代表的な溶接方法の一つです。

この記事では、アーク溶接の基本的な仕組みから、現場で使われる主な種類、初心者向けの具体的な作業方法と上達のコツまでを網羅的に解説します。

また、作業者の健康を守るために法改正で義務化された溶接ヒュームへの対策や、必要な資格などの安全対策についても詳しく説明します。

アーク溶接とは?金属が接合する基本的な仕組み


アーク溶接とは、アーク放電という現象を利用して金属同士を接合する技術です。
溶接機を使って電極と母材(接合したい金属材料)との間に強い電気を流し、そこで発生するアーク放電の高熱で金属を溶かして一体化させます。
この基本的な仕組みにより、強力な接合部を形成できるのが金属アーク溶接の特徴です。

アーク放電の熱で金属を溶かしてつなぐ原理

アーク溶接の原理は、電極と母材の間にアーク放電を発生させ、その中心温度が5,000~20,000℃にも達する高熱を利用することにあります。
この熱によって、母材と溶接棒(または溶接ワイヤ)の先端が局部的に融点以上に加熱されて溶け、混ざり合った状態の「溶融池」が形成されます。
この溶融した金属が冷えて固まることで、二つの部材のつなぎ目が一体化し、強固に接合が完了します。

アーク溶接で作業する4つのメリット

アーク溶接には多くの利点があります。
第一に、母材そのものを溶かして接合するため、非常に高い強度が得られます。
第二に、他の接合方法と比較して作業スピードが速く、効率的です。

第三に、溶接設備が比較的小型で持ち運びやすいため、様々な現場で作業が可能です。
第四に、設備導入や消耗品のコストが比較的安価である点も大きなメリットです。

ガス溶接と比較した際の違い

アーク溶接とガス溶接の最も大きな違いは熱源です。
アーク溶接が電気エネルギーを利用するのに対し、ガス溶接は可燃性ガスの燃焼熱を利用します。
アーク溶接は局所的に高温を発生させられるため、熱による歪みが少なく、厚い材料の溶接も効率的に行えます。

一方、ガス溶接は広範囲をゆっくりと加熱するため、薄板の溶接やろう付けに適しています。
ろう付けは母材を溶かさずに接合する点で、溶接とは原理が異なります。

【目的別】アーク溶接の主な種類と特徴


アーク溶接には様々な種類が存在し、加工したい素材や目的、求める品質に応じて適切な方法を使い分ける必要があります。

これらの種類は、電極が溶けるか溶けないかによって、大きく「溶極式(消耗電極式)」と「非溶極式(非消耗電極式)」の2つに大別されます。
それぞれの方式に代表的な溶接方法があり、特徴や用途が異なります。

溶接棒が溶ける「溶極式(消耗電極式)」の種類

溶極式アーク溶接は、電極自体が溶けて溶加材となり、溶接金属の一部を形成する方式です。
この方式では、電極として被覆が施された溶接棒や、自動で供給される溶接ワイヤが用いられます。
電極が消耗しながら溶接が進むため、消耗電極式とも呼ばれます。

代表的なものに、被覆アーク溶接やガスシールドアーク溶接があります。


●手溶接で最もポピュラーな「被覆アーク溶接」

被覆アーク溶接は、手溶接の中で最も広く利用されているポピュラーな方法です。
この方法では、フラックスと呼ばれる被覆剤が塗布された溶接棒を使用します。
溶接中にこの被覆剤が熱で分解されることで、溶融した金属を大気中の酸素や窒素から保護するシールドガスと、不純物を浮かび上がらせるスラグが生成され、健全な溶接部を形成します。


●効率的な作業が可能な「ガスシールドアーク溶接」

ガスシールドアーク溶接は、溶接ワイヤが自動供給される半自動溶接の一種で、作業効率が非常に高いのが特徴です。
溶接部を大気から保護するために、外部から不活性ガスや炭酸ガスなどのシールドガスを吹き付けます。
使用するガスによって種類が分かれ、アルゴンガスなどを用いるミグ溶接(MIG溶接)や、炭酸ガスを用いるマグ溶接(MAG溶接)などがあります。


●厚板の溶接に適した「サブマージアーク溶接」

サブマージアーク溶接は、自動溶接の一種で、特に厚板の溶接において高い能率を発揮します。
この方法では、溶接箇所をあらかじめ粒状のフラックスで覆い、その中でワイヤと母材との間にアークを発生させます。
アークがフラックスに隠れて見えないのが特徴で、熱効率が良く、深い溶け込みが得られます。

建築用の鉄骨や造船、パイプラインの配管製造などに用いられます。

溶接棒が溶けない「非溶極式(非消耗電極式)」の種類

非溶極式アーク溶接は、電極自体が消耗しない方式です。
電極にはタングステンのように融点が非常に高い材料が用いられ、アークを発生させる役割に特化しています。
金属を接合するために溶加材が必要な場合は、溶接棒(溶加棒)を別途溶融池に添加します。

代表的な方法としてTIG溶接(ティグ溶接)やプラズマ溶接が挙げられます。


●美しい仕上がりが特徴の「TIG溶接」

TIG溶接は、非消耗式のタングステン電極を用いる溶接方法です。
火花の原因となるスパッタがほとんど発生せず、うろこ模様の整ったきれいな溶接ビードが得られるのが最大の特徴です。
ステンレスやアルミ、チタンといった非鉄金属や、精密さが求められる薄板の溶接に最適ですが、作業速度は他の方法に比べて比較的遅くなります。


●高速な溶接を実現する「プラズマ溶接」

プラズマ溶接は、非溶極式の一種で、基本的な原理はTIG溶接と似ています。
しかし、アークを特殊なノズルで強制的に狭めることでエネルギー密度を非常に高くした「プラズマアーク」を利用する点が異なります。
これにより、TIG溶接よりもアークの集中性が高まり、より高速で深い溶け込みの溶接が可能になります。

精密な切断などの加工にも応用されます。

初心者向け|アーク溶接の基本的な手順を5ステップで紹介


アーク溶接を安全かつ正確に行うためには、正しい手順を理解することが不可欠です。

ここでは、初心者が被覆アーク溶接を行う際の基本的な方法を5つのステップに分けて紹介します。
この手順に沿って作業を進めることで、溶接の失敗を減らし、安定した品質を得ることができます。

ステップ1:溶接機・保護具など必要な道具を揃える

まず、作業に必要な道具を準備します。
アーク溶接機の本体に加え、溶接棒を掴むためのホルダーと、母材に接続して電気回路を作るためのアースケーブルが必要です。
安全に作業を行うためには、アーク光から目を守る遮光面、火傷を防

ぐ耐熱性の革手袋、そして衣服を守るための前掛けといった保護具が必須となります。

これらの接地や保護具の確認を怠らないようにしてください。

ステップ2:溶接する母材のサビや汚れを取り除く

高品質な溶接を行うためには、母材の表面をきれいにすることが重要です。
ワイヤーブラシやディスクグラインダーを使用し、溶接箇所のサビ、塗料、油分、水分などの汚れを完全に取り除きます。
汚れが残っていると、アークが不安定になったり、溶接欠陥の原因となったりします。

また、厚い板を溶接する場合は、溶け込みを良くするために部材の接合部に溝(開先)を設ける加工も行います。

ステップ3:母材の厚さに応じて電流値を調整する

適切な電流値の設定は、溶接の品質を左右する重要な要素です。
使用する溶接棒の太さや母材の厚みに合わせて、溶接機の電流値を調整します。
電流が弱すぎると溶け込みが浅くなり、強すぎると母材が溶け落ちて穴が開く原因となります。

一般的に、溶接棒のパッケージや溶接機本体に推奨される電流値の目安が記載されています。

ステップ4:アークを発生させてビードを形成する

電流値を設定したら、実際にアークを発生させます。
溶接棒の先端で母材の表面を軽く擦るか、軽く叩きつけるようにしてアークをスタートさせます。
アークが発生したら、溶接棒の先端と母材との間に適切な距離(アーク長)を保ちながら、一定の速度で溶接棒を動かして溶融池を形成していきます。

最初は短絡して溶接棒が母材にくっつきやすいですが、練習が必要です。

ステップ5:溶接後にスラグを除去して仕上がりを確認

被覆アーク溶接では、溶接部の表面がスラグと呼ばれるガラス状の膜で覆われます。
これは溶融した金属を大気から保護する役割を果たしますが、溶接部の確認や重ね溶接のためには除去する必要があります。

溶接部が冷えた後、チッピングハンマーで軽く叩いてスラグを剥がし、ワイヤーブラシで残ったスラグをきれいに取り除きます。
その後、ビードの形状や割れなどの欠陥がないか、仕上げの状態を確認します。

アーク溶接の仕上がりを向上させる5つのコツ


アーク溶接は、単に金属をくっつけるだけでなく、きれいで強い接合部を作ることが求められます。
特に初心者にとっては難しい作業ですが、いくつかの基本的なコツを意識して練習を重ねることで、仕上がりは格段に向上します。

ここでは、品質の高い溶接を実現するための5つのポイントを紹介します。

コツ1:アーク長を一定に保ちスパッタの発生を防ぐ

アーク長とは、溶接棒の先端と母材との距離のことで、これを一定に保つことが非常に重要です。
アーク長は、使用する溶接棒の直径と同じくらいが理想とされています。
アーク長が長すぎるとアークが不安定になり、スパッタと呼ばれる金属の粒が多く発生します。

逆に短すぎると溶接棒が母材に付着しやすくなります。
安定したアーク長を維持することで、スパッタが出ないきれいなビードを形成できます。

コツ2:溶接棒の角度を進行方向に対して70~80度に保つ

溶接棒(または半自動溶接のトーチ)を保持する角度も、溶接の品質に大きく影響します。
基本的には、溶接の進行方向に対して70~80度程度に傾けて構えます。
この角度を保つことで、溶融池の状態がよく見え、溶けた金属を進行方向へ適切に押し進めることができます。

溶接する向きや継手の形状によって最適な角度は変化するため、状況に応じた調整が必要です。

コツ3:溶接速度を均一に保ち安定したビードを作る

溶接棒を動かす速度(運棒速度)を一定に保つことは、均一な幅と高さのビードを作るための基本です。
速度が速すぎるとビードが細く、溶け込みも浅くなります。
逆に遅すぎると、ビードが盛り上がりすぎたり、母材が溶け落ちたりする原因となります。

すみ肉溶接などで幅の広いビードが必要な場合は、ウィービングという左右に振りながら進める技術を用いますが、その際も前進する速度は均一に保ちます。

コツ4:安定した姿勢を維持して手元のブレをなくす

溶接は手元で行う繊細な作業であり、安定した姿勢を保つことが不可欠です。
両足をしっかり開いて体を支え、脇を締めて腕を固定するなど、体がぶれない工夫をします。
特に、下向き姿勢以外の横向きや上向きといった難しい姿勢での作業では、不安定な体勢が手元のブレに直結し、溶接品質のレベルを大きく低下させる原因となるため、より一層姿勢の維持が重要になります。

コツ5:溶接欠陥を防ぐためにスラグを完全に取り除く

多層盛り溶接を行う場合、各層の溶接が終わるごとにスラグを完全に取り除くことが極めて重要です。
スラグが残ったまま次の層を溶接すると、スラグが内部に取り残される「スラグ巻き込み」という欠陥が発生します。
これは溶接部の強度を著しく低下させ、後から割れ(クラック)などの重大な問題を引き起こす原因となります。

特に初層(ルート)部のスラグ除去は丁寧に行う必要があります。

アーク溶接の作業に必要な資格と安全対策

アーク溶接は便利な技術ですが、作業には様々なリスクが伴います。
アーク光は目に有害な紫外線を放ち、高温の金属やスパッタは火傷の原因になります。
また、感電や火災、有害なヒュームの吸入といった危険もあります。

そのため、法律で定められた資格の取得と、適切な保護具の着用をはじめとする安全対策を徹底することが作業者には求められます。

「アーク溶接等の業務に係る特別教育」の受講が法律で義務化

日本の労働安全衛生法では、事業者が労働者にアーク溶接の作業を行わせる場合、事前に「アーク溶接等の業務に係る特別教育」を受けさせることが義務付けられています。
この教育は、作業者が安全に業務を遂行するために必要な知識と技能を習得することを目的としています。
教育の主な内容には、アーク溶接に関する基礎知識、溶接設備の種類や構造、安全な作業方法、関係法令などが含まれます。

講習内容と受講に必要な費用・日数の目安

アーク溶接特別教育は、全国の労働技能講習協会や民間の教習機関で実施されています。
講習は、アーク溶接の基礎知識や関係法令などを学ぶ学科講習と、溶接装置の取り扱いや基本的な溶接作業を学ぶ実技講習で構成されます。
受講に必要な日数は2~3日程度が一般的です。

費用は実施機関によって異なりますが、おおむね1万円から2万円程度が目安となります。

法改正で必須になった溶接ヒューム対策とは

2021年の法改正により、アーク溶接作業で発生する溶接ヒュームが特定化学物質に指定され、事業者には新たな健康障害防止措置が義務付けられました。
溶接ヒュームは、金属が蒸発した後に冷却・酸化してできる微粒子で、吸い込むと神経障害などを引き起こす健康影響が指摘されています。
具体的な対策として、全体換気装置による換気、有効な呼吸用保護具(防じんマスク)の着用などが求められます。

これは屋外作業であっても同様です。

アーク溶接に関するよくある質問

ここでは、アーク溶接に関して多く寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q1. 家庭用の100V電源でアーク溶接はできますか?

はい、可能です。
DIY用途などで、家庭の100Vコンセントで使用できる小型のアーク溶接機が市販されています。
ただし、出力が限られるため、溶接できるのは薄い板に限られます。

本格的な作業や厚い板の溶接には、よりパワーのある200V電源の溶接機が必要です。

Q2. ステンレスやアルミの溶接にはどの種類が適していますか?

ステンレスやアルミの溶接には、TIG溶接が最も適しています。
TIG溶接はスパッタが発生せず、仕上がりが非常に美しいため、これらの材料の精密な溶接に広く用いられます。
特にアルミ溶接では、交流出力が可能な専用のTIG溶接機が必要となります。

Q3. アーク溶接の特別教育に更新や有効期限はありますか?

いいえ、アーク溶接特別教育の修了証に更新の義務や有効期限はありません。
一度取得すれば、その資格は生涯有効です。
ただし、安全衛生の観点から、長期間作業から離れていた場合などには、事業者によって再教育が行われることが推奨されています。

まとめ

アーク溶接は、アーク放電の熱を利用して金属を接合する基本的な技術です。
その方法には被覆アーク溶接やガスシールドアーク溶接、TIG溶接など多くの種類があり、目的や素材に応じて使い分けられます。
安全に作業を行うためには、法律で定められた「アーク溶接特別教育」の受講と、法改正で義務化された溶接ヒューム対策が不可欠です。

正しい手順を学び、適切な安全対策を講じた上で、練習を重ねることが高品質な溶接作業の実現につながります。


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