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トルク係数とは?軸力と締め付けトルクの計算方法【ねじ・ボルト】

トルク係数とは、ねじやボルトを締め付けた際に、その締め付けトルクがどれくらいの力(軸力)に変換されたかを示す係数です。

機械設計や製造現場において、部品を適切に固定するためには、必要な軸力を発生させる締め付けトルクを正確に設定する必要があります。

本記事では、トルク係数の基本的な意味から、具体的な計算方法、そして軸力がばらつく原因と対策までを詳しく解説します。

まずは基本から!トルク係数とは何かを分かりやすく解説


トルク係数とは、締め付けトルクをボルトの軸力(締結力)に変換する際の効率を示す、単位のない数値のことです。

一般的に、ねじの締結設計で目標とする軸力を得るために必要なトルクを算出する際に用いられます。
この係数は、ねじ面や座面の摩擦状態によって大きく変動するため、締結の信頼性を確保する上で非常に重要な指標です。

トルクと軸力の関係は「T=K・d・F」という基本的な公式で表され、トルク係数はこの計算式の要となります。

締め付けトルクと軸力を計算する方法

ボルトやねじを設計通りに機能させるためには、目標とする軸力(部品同士を押し付ける力)を正確に発生させなければなりません。
この軸力を管理する最も一般的な方法が、締め付けトルクを管理する「トルク法」です。

具体的には、トルク係数を用いて、目標軸力から必要な締め付けトルクを算出します。
この計算により、現場でトルクレンチを使ってどの程度の力で締めればよいかの具体的な数値を設定することが可能になります。

締め付けトルク・軸力・トルク係数の関係を示す基本計算式

締付トルク、軸力、トルク係数の関係は、複数の計算式で表されます。
一般的に用いられる簡易的な計算式の一つに T=K・d・F があります。

ただし、この式における記号の定義は情報源によって異なる場合があり、例えば「d」が「ねじ径」や「ボルトの呼び径」を指すことがあります。
より詳細な計算には、材料の降伏点や座面摩擦係数などを考慮した複雑な計算式も存在します。

これらの式を利用することで、目標とする軸力(F)を得るために必要な締付トルク(T)を算出したり、逆に、かけたトルクから発生している軸力を推定したりすることが可能です。

計算式 T = K・d・F の各項目を解説

基本計算式「T=K・d・F」の各項目は、それぞれ以下の内容を示します。

T(締付トルク):ねじを回転させるために必要な力。単位はN·m(ニュートンメートル)。
K(トルク係数):締め付けトルクが軸力に変換される効率を示す係数。単位はない。
d(ねじの呼び径):ねじの直径のことで、M8ボルトであれば0.008(m)のようにメートルの単位で計算に用いる。
F(軸力):ボルトの軸方向に発生する引張力で、部品同士を固定する力。単位はN(ニュートン)。

これらの値の関係を理解することが、適切なねじ締結の第一歩です。

トルク係数が重要視される理由と軸力がばらつく原因


トルク係数が重要視されるのは、この数値が一定ではなく、様々な要因で変動するからです。
同じ締め付けトルクで作業しても、トルク係数が異なれば発生する軸力に大きなばらつきが生じます。
この軸力のばらつきは、締結力の不足による緩みや、過大な締結によるボルトの破損といった不具合に直結します。

そのため、トルク係数の性質を理解し、その変動要因を管理することが、安定した品質の締め付けを実現するために不可欠です。

トルク係数を左右する2つの摩擦(ねじ面・座面)

トルク係数の値を決定づける最大の要因は摩擦です。
締め付けトルクの約90%は摩擦に打ち勝つために消費され、残りの約10%だけが軸力の発生に使われます。
この摩擦は、主に2つの箇所で発生します。
一つは「ねじ面の摩擦」で、おねじとめねじの接触面で生じます。

もう一つは「座面の摩擦」で、ボルト頭部やナットの底面と被締結材との間で発生します。
これらの箇所の摩擦係数が変化すると、トルク係数も直接的に変動します。

【一覧表】ねじ表面の状態によるトルク係数の目安値

トルク係数は、ねじの表面状態によって大きく変化します。
以下に、一般的な表面状態ごとのトルク係数の目安を一覧で示します。

潤滑なし(無潤滑、脱脂状態):K=0.2~0.3
潤滑あり(エンジンオイル等):K=0.12~0.18
亜鉛めっき処理:K=0.18~0.25
二硫化モリブデンペースト塗布:K=0.08~0.12

この表からも分かるように、特に潤滑の有無が値に大きく影響します。
ただし、これらの値はあくまで目安であり、実際の作業環境によって変動するため注意が必要です。

潤滑剤(オイル等)がトルク係数に与える影響

潤滑剤(オイルやグリスなど)をボルトのねじ部や座面に塗布すると、摩擦係数が大幅に低下します。
これにより、締付係数とも呼ばれるトルク係数の値は小さくなります。

トルク係数が小さくなると、締め付けトルクが軸力へ変換される効率が高まるため、同じトルクで締めてもより大きな軸力を得ることが可能です。

また、摩擦が安定することで軸力のばらつきを抑える効果も期待でき、締結の信頼性向上に寄与します。

適切なボルト締め付け管理を行うためのポイント

信頼性の高いボルト締結を実現するには、設計段階での適切なトルク計算と、現場での正確な管理が不可欠です。

まず、設計においては、使用環境やボルトの材質、表面処理を考慮してトルク係数を設定し、目標軸力から締め付けトルクを算出します。
次に、作業現場では、校正されたトルクレンチを用いて設定されたトルク値で正確に締め付け作業を行います。

定期的なトルクレンチの校正や、作業者のトレーニングも重要な管理ポイントです。

トルク法を用いた締め付け管理で注意すべきこと

トルク法は、トルクレンチ一本で管理できるため最も手軽で広く採用されている方法ですが、注意点も存在します。

最大の注意点は、摩擦係数の変動によってトルク係数がばらつき、結果として軸力が不安定になりやすいことです。
特に潤滑状態が一定でない場合や、ねじや座面にゴミが付着していると、同じトルク値で締めても軸力は大きく変わってしまいます。

そのため、トルク法を用いる際は、このばらつきを前提とした設計が求められます。

ボルト・ねじの緩みや破損を防ぐための対策

ボルトやねじの緩み、破損といった不具合を防ぐためには、設計で意図した通りの軸力を与えることが基本です。

そのための有効な対策として、潤滑剤を適切に使用し、摩擦状態を安定させることが挙げられます。
これによりトルク係数のばらつきが抑えられ、軸力が安定します。

さらに高い精度が求められる場合は、トルクに加えてボルトの回転角度も管理する「回転角法」の採用や、緩み止め機能を持つ座金やナットを併用することも有効な対策となります。

トルク係数に関するよくある質問

ここでは、トルク係数に関して実務でよく疑問に挙がる点について、Q&A形式で回答します。

トルク係数の一般的な値はいくつですか?

表面処理や潤滑状態によって変動しますが、潤滑なしの一般的な鋼(鉄)製ボルトの場合、0.15〜0.2が目安とされます。
ステンレス(SUS304など)は鉄に比べて摩擦係数が高く、焼き付きやすいため注意が必要です。
アルミ材への締結など、材質の組み合わせによっても値は変わるため、設計の際は使用条件に合わせた値を選定することが重要です。

締め付けトルクが同じなのに軸力が変わるのはなぜですか?

ネジのねじ面やナットと被締結材との座面における摩擦係数が、締め付けのたびに微妙に変化し、トルク係数が変動するためです。

表面の粗さ、潤滑剤の塗布ムラ、ゴミの付着などが摩擦係数を変える要因となり、結果として同じ締め付けトルクをかけても、軸力に変換される力の割合が変わってしまいます。

トルク係数を小さくする方法はありますか?

潤滑剤を塗布することが、トルク係数を小さくする最も効果的な方法です。

潤滑剤によって摩擦係数が低減し、締め付けトルクが軸力に変換される効率が高まります。
トルク係数が大きい状態よりも小さいほうが、軸力のばらつきが少なくなる傾向があります。

この方法は、M3,M4,M6,M8といった様々なサイズのねじで有効です。

まとめ

トルク係数は、ねじやボルトの締め付けトルクと、それによって発生する軸力とを結びつけるための重要なパラメータです。

この係数は一定ではなく、特にねじ面や座面の摩擦状態に大きく影響を受けます。
そのため、信頼性の高い締結設計や品質管理を行うには、潤滑などの表面状態を考慮して適切なトルク係数を設定し、軸力のばらつきを管理することが不可欠です。

なお、本記事ではねじ締結に焦点を当てましたが、モーターなどの動力源におけるトルクとは文脈が異なる点に留意してください。


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